022 日野多香子先生

2010年12月30日 (木)

盲導犬への深い愛と理解によって生み出されたリタイア犬ポリーの物語

リタイア犬ポリーの明日 (いのちいきいきシリーズ) Book リタイア犬ポリーの明日 (いのちいきいきシリーズ)

著者:日野 多香子
販売元:佼成出版社
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 この本は、リタイア犬であるラブラドール・レトリバー“ポリー”の物語。著書『友情の二人五脚ー盲導犬の育成にとりくんだ塩屋賢一の情熱』や『ありがとう盲導犬リチャード』などで盲導犬への深い理解を示す児童文学作家日野多香子さんの新作物語です。

 リタイア犬とは、盲導犬の引退後の呼び名。ラブラドール・レトリーバーのポリーはリタイア犬となり、庄司家での生活を始めます。あたたかく迎えられたポリーですが、ボールを投げても拾わない、かけっこをしても走ろうとしない。犬を飼うことを楽しみにしていた小学校三年生の裕之は、そんなポリーの姿に戸惑いを感じますが…。
 ポリーの盲導犬としての習性を理解していく裕之、リタイア犬の姿に勇気づけられるすくすくスクールの子ども達、そして、車いすのおじさん・中谷さん、小学校の総合学習の時間に盲導犬のお話をする庄司家のお母さん…盲導犬としての役割を終えた後も、ポリーは家庭や地域で大活躍。

 挿絵は、日本児童美術家連盟会員で、『がたたんたん』(ひさかたチャイルド)で絵本にっぽん賞受賞した福田岩緒さん。福田岩緒さんが描くポリーの表情がいきいきとしていて、かわいい。ポリーの息づかいまで感じられるようです。

 私は、盲導犬をたまに見かけるだけで、触れたことも声をかけたこともありませんでした。でも、今度見かけたら、心の中で「お疲れ様」と声をかけてあげようと思います。ポリーを通して、盲導犬に深い親しみを感じました。ポリーに出会って元気になっていく車いすのおじさん・中谷さんの姿もすてきです。私達人間も犬も、リタイアした後の人生があるんだということを教えられました。この本は、明るく前向きな気持ちに満ちています。

 主人に対する「信頼」と「愛」の心で、せいいっぱい働き、自分の仕事に誇りと使命感を抱いている盲導犬の姿が、ポリーを通して感じられます。リタイア犬の様子がよく分かりました。盲導犬への深い愛と理解によって生み出された物語であることを感じます。この本を読んで、多くの子ども達に「目が不自由な人の目、心の友」として活躍している盲導犬と盲導犬を引退したリタイア犬のことを知ってほしいと思います。著者の『幸せをはこぶ使者―盲導犬からリタイア犬へ』『今日からは、あなたの盲導犬』もお薦めします。最後に、この物語のポリーへ、いっぱい働いたのだから、庄司家の皆さんとゆったりくつろいでね。

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2010年7月30日 (金)

桜美林大学アカデミー児童文学入門講座2010年前期終了

 5月11日から7月20日まで開講された桜美林大学アカデミーの児童文学入門講座を10回皆勤にて終えることができました。

 講師は児童文学作家の日野多香子先生。

 名作鑑賞では、「トム・ソーヤの冒険」(マークトウェイン)や「ライオンと魔女」(ルイス)、「風にのってきたメアリーポピンズ」(トラバース )を再読することができ、改めて、それぞれの作品の魅力を堪能しました。大人になって読むと、子どもの頃読んだ時とは全く違った印象を抱き、児童文学作品の奥深さを感じさせられました。

 最新作「やぶ坂に吹く風」(高橋秀雄)のような素朴で実直な作品に出会えたことも日野先生のご指導ならではの幸運でした。今回は、日野先生の「つばさのかけら」や「水面の肖像」をはじめとして、「あの頃はフリードリヒがいた」(リヒター)や「光と風と雲と樹と」(今西祐行)、「優しさと強さと」(早乙女勝元)などの戦争文学を読み込む機会にも恵まれました。

やぶ坂に吹く風 (文学の散歩道) Book やぶ坂に吹く風 (文学の散歩道)

著者:高橋 秀雄
販売元:小峰書店
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 ファンタジーにしても、戦争文学にしても、名作として認められた作品には、人間への深い洞察があり、人間の本質がリアルに描かれていることに気付かされました。これから作品を鑑賞する上でも、創作するに当たっても、大切なことではないかと思いました。

 娘と過ごした25年間の手記を原稿用紙250枚にて書き上げました。開講中、日野先生をはじめ、講座の参加者の皆さんに丁寧に読んでいただき、批評やアドバイス、励ましをたくさんいただきました。今、その原稿を練り直している最中です。可能な限り、より良い文章に練り上げたいと思っています。

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2010年5月13日 (木)

桜美林アカデミー 児童文学創作入門講座

 5月11日(火)から桜美林アカデミー 児童文学創作入門講座が始まりました。講師は、児童文学作家の日野多香子先生。去年の同じ時期の講座から参加しています。昨年は、創作歴10年以上の方々が参加されていましたが、今回は、3月に『はこちゃんのおひなさま』を出版された丸田かね子さん以外の方は、児童文学の創作に関しては私と同じく初心者でした。

 今期は、娘と過ごした25年間の手記をまとめることを目的として参加しています。児童文学の作品を書く前に、一度、自分の中で記録として残しておきたい内容です。ちょうど来年、主人の母と私の母が喜寿を迎え、息子が成人式を迎えますので、その記念に。

 時間がかかるかもしれませんが、トライしてみたいと思っています。

時計坂の家 Book 時計坂の家

著者:高楼 方子
販売元:リブリオ出版
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 講座を始めるにあたって、ナルニア国物語を再読したり、高楼 方子さんの『時計坂の家』など児童書を読んでいます。その合間に村上春樹さんの『1Q84』を読みました。やっぱり村上春樹さんはいいですね

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2010年4月11日 (日)

戦火を逃れたお雛様

 4月10日(土)、児童文学作家の日野多香子先生と絵本『はこちゃんのおひなさま』の作家である丸田かね子さんと3人で、須坂市にある小池千枝コレクション 世界の民族人形博物館を訪れました。

 丸田さんが同館に寄贈されたお雛様の写真です。 Photo_4

はこちゃん(丸田かね子さん)の疎開先のおじさんの家に届けられたことで東京大空襲の戦火を逃れたお雛様です。昭和20年代のお雛様ですが、きれいなまま保存されていました。

  戦争から60年あまり経た今、丸田さんの絵本の中で甦り、こうして世界の民族人形博物館のショーケースの中で毎年、この時期に展示されることになったお雛飾り。

 ショーケースに入ったお雛様を見ながら、幼かりし日の丸田さんにお雛様を託された不思議な計らいを感じ、絵本もお雛様も後世に残って欲しいと思いました。

 きっとお雛様も喜んでいることと思います。同館では、折しも三十段雛飾り 千体の雛祭りの会期中にて、高さ6m、30段の雛壇とつり雛100本の約1千体のひな人形が展示されていました。

30 写真は三十段雛飾り、見事な美しさでした。でも、どうやって飾ったのかしら?と整然と並べられたお雛様を上の階の喫茶室から眺めました。

 館内には、古くは享保雛から、昭和初期のお雛様、そして、現代のお雛様まで、1000体近くのお雛様が展示されていました。たくさんのお雛様に囲まれて、女の子に戻ったような気分を味わいました。

 善光寺にお参りして、近くにある長野県信濃美術館 東山魁夷館に立ち寄りました。

 長野では桜が咲き始め、あたたかい一日、お雛様や東山魁夷の絵画の美しさと咲き始めた桜や満開の杏の花を眺めて、心が満たされた一日でした。

 絵本『はこちゃんのおひなさま』のアルバムはこちらです。

追記:『はこちゃんのおひなさま』が全国学校図書館協議会の選定図書に加えられました。 

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2010年2月 4日 (木)

2009年後期児童文学入門講座終了

 11月7日から2月2日まで開講された桜美林大学アカデミーの児童文学入門講座を10回皆勤にて終えることができました。

 講師は児童文学作家の日野多香子先生

【プロフィール】
東京学芸大学中等教育学科国語科卒。『風の花ぞの』(第10回講談社児童文学新人賞)、『闇と光の中』(第10回児童文学者協会新人賞)、『ふるさとの山河を歌の心に』(第36回サンケイ児童出版文化賞推薦賞)、『今日からはあなたの盲導犬』(2008年読書感想文コンクール課題図書)など著書30冊余。創作活動とともに、児童雑誌の編集や出版企画および創作教室、通信講座に携わり、麻生かづこ、計良ふき子、深山さくらほか多くの児童文学作家を輩出する。

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 児童文学について知ることから始め、その上で創作へと向かいました。創作歴10年以上の方と私のように全く初めての者と参加者11名それぞれでしたが、期間中にひとり1作品を書き上げることが目標。日野先生の懇切丁寧でユーモアたっぷりのご指導を得ることができ、受講仲間で読みあい感想を述べあい、とても充実した講座でした。

 今期は、「せん太くんのお正月休み」というタイトルの作品にチャレンジしましたが、完成には至りませんでした。もう少し、工夫と推敲を重ねて作品に仕上げることができれば・・・と思っているところです。

 前期の講座の参加者で10年間ほど創作を続けていらした方が地域の文学賞に応募されて見事 佳作入選を果たされました。また、前期から続けての参加者で10数年創作を続けていらした方の作品が銀の鈴社から絵本として出版されることになりました。お二人とも日野先生に師事されています。ご本人の意志と努力と先生のご指導の賜物だと思いました。

 来期は5月開講です。それまで、児童文学作品の読書と習作を試みて過ごしたいと思っています。最近は安房直子さんの作品にはまっています。

魔女の宅急便5冊セット Book 魔女の宅急便5冊セット

販売元:福音館書店
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魔女の宅急便 〈その6〉それぞれの旅立ち (福音館創作童話シリーズ) Book 魔女の宅急便 〈その6〉それぞれの旅立ち (福音館創作童話シリーズ)

著者:角野 栄子
販売元:福音館書店
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安房直子コレクション 全7巻セット Book 安房直子コレクション 全7巻セット

著者:安房 直子
販売元:偕成社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

【今期の講座で鑑賞した作品】

・現代の代表的な作品
安房直子「白いおうむの森」、灰谷健二郎「太陽の子」、角野栄子「魔女の宅急便」。
・海外の名作児童文学
ベルヌ「十五少年漂流記」、サンテグジュベリ「星の王子さま」、コロディ「ピノキオ」。
・海外の児童文学
エンデ「モモ」、カニグズバーグ「クローディアの秘密」、ピアス「トムは真夜中の庭で」。

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2009年8月15日 (土)

鎮魂の日 8月15日を覚えて

 終戦から64年を経て、日常の中で戦争のことが語られることがほとんどなくなりました。私が幼かった頃は、近所のおばあちゃん達やおばさん達、そして、母が折に触れて戦争のことを語ってくれました。学徒出陣したおじが、たった一度だけ戦争のことを語ってくれたことがありました。実際に戦争の恐ろしさを体験した人が語る言葉や声には力がありました。

 15年前の夏、丸木美術館に子ども達と行った時に『ひろしまのピカ』を購入しました。読み聞かせをためらう私に、息子から繰り返し読むようにせがまれて、歴史を伝えるために児童文学の果たす役割を思いました。

 桜美林大学アカデミーの児童文学創作入門講座で講師の日野多香子先生より、今の子ども達の心に響くように戦争を語った絵本を2冊、紹介していただきました。8月15日、お子さん達にお薦めの絵本です。

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2009年5月18日 (月)

盲導犬と盲導犬と歩く人とその盲導犬を育てる人の心の交流の物語~(日野多香子・文/増田勝正・写真)『今日からは、あなたの盲導犬』

 目の見えない人のために活躍する盲導犬(アイメイト=「わたしの愛する目の仲間」)。私は、本書に出会うまでは、その姿を街で見かける程度で、その本来の姿を知りませんでした。

 ラブラドール・レトリバーは、命令をよくきき、体格が歩く人間を導くのに適しているので盲導犬として選ばれることが多い犬種だそうです。ラブラドール・レトリバーが「繁殖奉仕」と呼ばれるボランティアの家で生まれた後、「飼育奉仕」と呼ばれるボランティアの家で育てられ、一年後、人間と心を通わせる頼もしい若犬に育ってから、アイメイト協会の盲導犬指導員のもとに迎えられるとのこと、一匹の盲導犬の卵を育てるために多くのボランティアの人たちの心が込められていることを知りました。
 目の不自由な人の目となり、その安全を守るための4ヶ月に及ぶ本格的な訓練は、盲導犬の胸のベルトであるハーネスをつけるところから、階段の登り降り、信号や危険の判断、踏み切りや交通量の多い道での訓練…、そして、盲導犬と歩く人(主人)との4週間の合宿訓練を経て、雑踏の中を盲導犬と二人だけで歩く卒業試験…、その全てが命がけ。

 本書では「盲導犬を育てる人」ー盲導犬指導員の原祥太郎さん「盲導犬と歩く人」ー大石さん、そして、アイメイト協会から1000頭目の盲導犬として旅立っていくセロシアの出会いを通して、盲導犬がどのように育てられ、どのように目の不自由な人を支えているのかが写真入りで詳しく紹介されています。
 著書『友情の二人五脚ー盲導犬の育成にとりくんだ塩屋賢一の情熱』や『ありがとう盲導犬リチャード』などで盲導犬への深い理解を示す児童文学作家の日野多香子氏の文章と犬、猫、その他ペットの写真を30年以上撮り続け、アイメイト協会のボランティア活動にも参加している増田勝正氏の写真による絶妙なコラボレーションによる盲導犬と「盲導犬と歩く人」とその「盲導犬を育てる人」の心の交流の物語です。
 

今日からは、あなたの盲導犬 (いのちのえほん) Book 今日からは、あなたの盲導犬 (いのちのえほん)

著者:増田 勝正,日野 多香子
販売元:岩崎書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

幸せをはこぶ使者―盲導犬からリタイア犬へ (イワサキ・ライブラリー) Book 幸せをはこぶ使者―盲導犬からリタイア犬へ (イワサキ・ライブラリー)

著者:日野 多香子
販売元:岩崎書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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2009年5月17日 (日)

児童文学創作入門講座受講

 5月に入ってから児童文学創作入門講座の受講を始めました。講師は児童文学作家の日野多香子先生。主催:桜美林大学アカデミーです。

 児童文学創作入門講座 文学作品を書く楽しさを知ろう

 点頭てんかんによる知的な障害を抱えている娘が今年の8月で24歳になります。これまで娘と生きて来た日々をエッセイや体験記としてまとめて投稿したことがありますが、その中には、苦しみや悲しみだけでなく、留めておくには勿体無いような幾つもの素敵なエピソードがあります。日々のあわただしさの中に紛れてしまう前に、児童文学作品にできれば・・・との強い願いを込めて受講を始めました。

 これまで続けてきた短歌では表現できない思いを込めて、言葉を綴っていきたいと思っています。体力や精神力の衰えもありますから、ぼちぼちですが・・・。

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