盲導犬への深い愛と理解によって生み出されたリタイア犬ポリーの物語
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リタイア犬ポリーの明日 (いのちいきいきシリーズ) 著者:日野 多香子 |
この本は、リタイア犬であるラブラドール・レトリバー“ポリー”の物語。著書『友情の二人五脚ー盲導犬の育成にとりくんだ塩屋賢一の情熱』や『ありがとう盲導犬リチャード』などで盲導犬への深い理解を示す児童文学作家日野多香子さんの新作物語です。
リタイア犬とは、盲導犬の引退後の呼び名。ラブラドール・レトリーバーのポリーはリタイア犬となり、庄司家での生活を始めます。あたたかく迎えられたポリーですが、ボールを投げても拾わない、かけっこをしても走ろうとしない。犬を飼うことを楽しみにしていた小学校三年生の裕之は、そんなポリーの姿に戸惑いを感じますが…。
ポリーの盲導犬としての習性を理解していく裕之、リタイア犬の姿に勇気づけられるすくすくスクールの子ども達、そして、車いすのおじさん・中谷さん、小学校の総合学習の時間に盲導犬のお話をする庄司家のお母さん…盲導犬としての役割を終えた後も、ポリーは家庭や地域で大活躍。
挿絵は、日本児童美術家連盟会員で、『がたたんたん』(ひさかたチャイルド)で絵本にっぽん賞受賞した福田岩緒さん。福田岩緒さんが描くポリーの表情がいきいきとしていて、かわいい。ポリーの息づかいまで感じられるようです。
私は、盲導犬をたまに見かけるだけで、触れたことも声をかけたこともありませんでした。でも、今度見かけたら、心の中で「お疲れ様」と声をかけてあげようと思います。ポリーを通して、盲導犬に深い親しみを感じました。ポリーに出会って元気になっていく車いすのおじさん・中谷さんの姿もすてきです。私達人間も犬も、リタイアした後の人生があるんだということを教えられました。この本は、明るく前向きな気持ちに満ちています。
主人に対する「信頼」と「愛」の心で、せいいっぱい働き、自分の仕事に誇りと使命感を抱いている盲導犬の姿が、ポリーを通して感じられます。リタイア犬の様子がよく分かりました。盲導犬への深い愛と理解によって生み出された物語であることを感じます。この本を読んで、多くの子ども達に「目が不自由な人の目、心の友」として活躍している盲導犬と盲導犬を引退したリタイア犬のことを知ってほしいと思います。著者の『幸せをはこぶ使者―盲導犬からリタイア犬へ』や『今日からは、あなたの盲導犬』もお薦めします。最後に、この物語のポリーへ、いっぱい働いたのだから、庄司家の皆さんとゆったりくつろいでね。
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