思い出の絵本 No.5 『ほうまんの池のかっぱ』
幼い娘が通所訓練施設の図書コーナーから借りてきた思い出の絵本です。点頭てんかんという重い病を抱えて生まれてきた娘には知的なハンディがあります。乳幼児期は、抗てんかん剤の影響で、眠っていることが多く、起きている時もぼーっとしていました。そんな娘に何か楽しみを見つけてあげたいと思って始めたのが絵本の読み聞かせでした。
ノンタンのシリーズに始まり、「ぐりとぐら」のシリーズ絵本…それからの展開が中々できない娘に変化が訪れたのは、隣接する公立の保育園との統合保育が行われている通所訓練施設に通い始めたのがきっかけでした。
同じ年齢の健康な子ども達と接する中で、絵本や紙芝居の読み聞かせを受け、楽しみを共有する内に、友達の真似をして、自分で絵本を借りてくるようになったことです。初めて借りて来た絵本は、『はじめてのおつかい』という絵本と思っていましたが、当時つけていた「読み聞かせのメモ」を辿ると初めて借りて来た絵本は、『ほうまんの池のカッパ』でした。(以前、思い出の絵本ーNo,3で、で初めて借りて来た絵本が『はじめてのおつかい』だったと書いていましたが、当時のメモを辿ると私の記憶違いであることに気がつきました。これからは、思い出の絵本は、当時のメモを見ながら描き続けたいと思います。)
表紙の絵の大きな男は、とらまつ。種子島一の力持ち、力も強いし、釣りも上手と自分のことを得意気に自慢しています。
とらまつが、ある日、ほうまんの池で、釣りの魚をおかしな手に奪われます。「ワラビが あたまを だすように、ぬくりん、ぬくりんと、 おかしな てが たくさん はえて でた。」という具合に椋鳩十さんのオノマトペを生かした語りに、娘は魅了されたようです。当時、生後6ヶ月だった息子も声を立てて笑っています。
「こらまあ、なんちゅうことだい。」とたまげて、ひっくりかえっているとらまつの姿が赤羽末吉さんによって、こっけいに描かれています。
次の日に仕返しにゆくとらまつですが、ワラビのような手と思っていたのは、ほうまんの池に棲むカッパ達の手だったのです。10匹のカッパ達に、こっぴどく頭突きを食らうとらまつ…
ごぼぼん、ごぼぼん、ぬくん、ぬくん、ぬくん…ほうまんの池のカッパ達が姿を現す時のオノマトペも子どもには面白く感じられるようです。 娘は、この絵本がよほど気に入ったようで、赤ん坊だった弟のことを「まつ」と呼ぶようになり、弟も「まつ」と呼ばれると返事をするようになりました。幼い姉と弟とのなつかしい思い出の一冊です。
種子島一の力持ちのとらまつとほうまんの池に棲むカッパ達のその後が少し不気味で、また愉快でもあります。椋鳩十さんの日本語のオノマトペを生かした民話調の語りと赤羽末吉さんの描くとらまつとカッパの愉快な姿が魅力の絵本です。国際アンデルセン賞優良作品賞、小学館絵画賞(第24回)受賞作品です。
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