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2009年1月27日 (火)

子どもの人生にとって、いかに絵本が大切な存在であるかを実証する記念碑的一冊 『クシュラの奇跡』

 『クシュラの奇跡−140冊の絵本との日々』は、染色体の異常により複雑で重い障害を抱えたニュージーランドの女の子クシュラが生まれてから3歳9ヶ月になるまでの成長の記録とその間にクシュラが出会った140冊の絵本の物語です。腎臓や心臓、視力、身体的な発育の遅れと、生後間もなく次々と異常が発見され、絶望的な日々を送っていたクシュラとクシュラの両親に一条の光を与えたのが絵本の読み聞かせでした。昼夜分かたず眠れないクシュラを膝に抱きながら、母親が始めた絵本の読み聞かせに、クシュラは強い関心を示し、その後、医学的な診断を超えた成長を遂げることになります。
 

 日本で翻訳出版されたのは1984年。当時、名作絵本の手引書として、また、子どもの成長における読み聞かせの意義を伝える本として高い評価を得ました。

 私が同著と出会ったのは、生後10ヶ月の長女が点頭てんかんと診断された1986年のことでした。悲嘆にくれる日々に、同著と出会い、深い感銘を受けました。

 22年の歳月を経て普及版が出版され、当時の自分と娘の姿と重ね合わせながら、再読しました。同著の特徴は、クシュラの発達の過程や、その過程において出会った絵本の発達段階における意義が、具体的に、かつ、実証的に、著者の抑制のきいた文体によって語られている点にあると思います。

 クシュラの母親のパトリシアによる膨大な量の緻密な成長記録(メモ)と著者の学問的な学び、そして、書店経営や読書教育の実践によって生み出された同著は、子どもの人生にとって、いかに本が大切な存在であるかを、また、幼少期における絵本の読み聞かせの果たす役割がいかに大きいかを力強い言葉で実証しています。

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