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2009年1月28日 (水)

ベンとベンを取り巻く人々を語ることを通して「アスペルガー症候群」への理解を促す物語

 主人公のベンは、算数と理科がばつぐんにできる頭のいい男の子。学校のチェス大会ではいつも優勝、コンピューターにもかなり詳しい。それなのに、いつも先生に叱られてばかり。どうして先生は、いつもわかりにくいいい方をするんだろう? どうしてぼくは、いつもおこられてばっかりいるんだろう? 学校なんかだいきらいだ!と言うベン。

 ベンは、校庭のごみ拾いをしている最中に青いびんを見つけました。青いびんからすうっと立ち上がってくる白い煙。「きっとこれ、魔法のびんだよ。」と言うアンディ、「やったー!」と喜ぶベン。アンディは、ベンの幼い頃からの仲良し、話の途中で、突然話題を変えたり、奇妙な行動をとるベンをあるがままに受けとめています。二人だけにしか見えない白い煙が、次々と二人の願いを叶えてくれることに…。

 ベンのパパが宝くじで60万ドルを当てました。ベンは、願い事の一つである新しいコンピューターを手に入れることができそうです。だけど、パパが買おうとしている新しい家は、いやです。ベンは新しいものが大の苦手です。声のかぎりにわめいたり、全身の力を振り絞って手をばたつかせたりします。そんなベンを静かに見守るおばあちゃん。

 幼い頃に母親を亡くしたベンは、父親と祖母に育てられています。おばあちゃんは、日常生活に困難を抱えているベンを精神分析医に診てもらうことを勧めました。パパも宝くじの60万ドルがあるからいいさと渋々従うことに…。そして、ベンは、専門医によって、「アスペルガー症候群」と診断されました。
 他人と関わることが得意でないことや他の人が何を考えているのか、どう感じているのか、上手く理解できないこと、そして、自分が考えていることや感じていることを言葉にすることが苦手であること、しばしば、あるひとつの事柄に興味を持ち、その分野に関しては、天才的な素質があること、そのことについて、何度も同じ話を人にしてきかせるということなど、アスペルガー症候群についての説明がなされると、「コンピューター」と同時に叫ぶパパとおばあちゃん。

 ベンの新しい家にはパパとおばあちゃんともう一人、ベンの家族が増えることになりそうです。ベンは新しい家に、上手くなじむことができるのでしょうか。そして、新しい家族を受け入れることができるのでしょうか。
 ベンを取り巻くパパとおばあちゃん、親友のアンディ、学校の先生、クラスメートなどの関わりを通して、アスペルガー症候群への理解を促す物語です。ベンが見つけたふしぎな青いびんが、あなたを心温まるファンタジーの世界へと誘ってくれるでしょう。

 アスペルガー症候群は、医学の進歩によって近年見いだされました。安易に「アスペルガー症候群」だと判断することは控えてください。アスペルガー症候群は、専門家による診断が必要な疾患です。薬ではなおせない、そして、一生付き合ってゆかなければならない脳の疾患です。
 ベンのような子ども達が生きてゆくためには周囲の理解と配慮が必要です。ベンのパパは、「助けが必要」という言い方をしています。
 アスペルガー症候群への理解が少しずつ確実に広がることを通して、ベンのような子ども達にとって生きやすい社会が築かれてゆくことを願ってやみません。できるだけ多くの方々にお子さんと一緒に読んで欲しい本の一冊です。

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