しろいうさぎとくろいうさぎのほのぼのと切ない愛の物語ーくろいうさぎの悲しそうな顔を忘れないでいたい 『しろいうさぎとくろいうさぎ』
広い森の中に住んでいる白いうさぎと黒いうさぎ。3色使いの墨絵のような濃淡の絵の世界で語られるニひきのうさぎの愛の物語。ページをめくるたび、二ひきのうさぎのふわふわとした毛の触感が感じられます。
二ひきは毎日、一緒に楽しく遊びます。
ある日のこと。
たんぽぽが咲き、たんぽぽの綿毛が飛ぶ森の中の野原で、「うまとび」をする二ひき。
ひなぎくやきんぽうげの咲いている野原で、かくれんぼをする二ひき。
黒いちごの茂みのまわりで、ぐるぐるとかけっこをする二ひき。
楽しそうなニひきですが、時おり、黒いうさぎが、急に座り込んで、とても悲しそうな顔をします。「どうしたの?」と聞く白いうさぎに、「うん、ぼく、ちょっと、かんがえてたんだ」と答えます。泉できれいな水を飲んだり、たんぽぽをたくさん食べたり・・・満ち足りたように見えるニひきですが、また、黒いうさぎは、悲しそうな顔をして、座り込んでしまいます。白いうさぎが尋ねると・・・。
森の澄んだ空気、泉のきよらかな水、木の葉のそよぎ、草いきれ、月の光・・・すべてが二ひきを祝福しているようです。そっと手を重ね、たんぽぽの花を耳にさす二匹、輪になって踊る森の動物達・・・ほのぼのと心温まるラストシーンの中、なぜか黒いうさぎの悲しそうな顔が浮かびます。
原題は、THE RABBITS’ WEDDING、1958年に出版されています。うさぎの毛の黒と白が人間の肌の色の象徴であるとすれば・・・。ほのぼのと切ない愛の物語、黒いうさぎの悲しそうな顔、その切なさを忘れないでいたいと思います。
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