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2009年1月30日 (金)

タゴールの詩に思いを馳せて、生きるとは、そして、幸せとは何かを考えさせられる一冊  『家なき鳥』

 インドの貧しい家の娘として生まれたコリーの半生を描いた物語。
 貧しさゆえに13歳で嫁ぎ、持参金が目的で娶られたコリー。花婿は結婚後すぐに病死、その後、義母にこき使われ、「未亡人の町」に捨てられる。お金もなく、教育も受けていない、カースト制度の中で身分も低く、若くして未亡人となってしまったコリー。コリーのような少女は、インドの中に数多く存在するという。
 女の子には教育は必要ないと考える母親、嫁を労働力としか見なしていない義母、インドの女性の識字率は低い。コリーは、母親から教わった刺繍の中に自己表現を見出ながら育っていく。朝から晩まで、義母にこき使われ、働き尽くめの日々、わずかな時間を惜しんで、義父から文字を習う。義父が愛したタゴールの詩を読むために・・・。

 コリーがいちばん気に入っているタゴールの詩は、鳥の群れが昼も夜も空を飛んでいく姿をえがいた詩だ。群れの中に一羽、かえる家のない鳥がいる。いつも違う場所に飛んでいく。タゴールの詩の中の一羽の鳥に自分の姿を重ね、心の支えにしていたのだろうか。義父の死後、暮らしのために、義父が大切にしていたタゴールの詩集を売るという義母に、実の母親から結婚の時に贈られた銀の耳飾りを手渡してしまう。コリーにとっての唯一の財産だった。
 義父の死後、タゴールの詩集だけが手元に残り、未亡人の町に捨てられたコリー。実家には帰ることができない。まさに「かえる家のない鳥」のようだ。
 逆境の中、母親から習った刺繍とタゴールの詩を支えに、明るく前向きに生き抜く。そして、未亡人を支援する女性と出会い、タゴールの詩を理解してくれる伴侶とめぐり合う。
貧しさと身分の低さと教養の無さを克服する力をコリーに与えたタゴールの詩に思いを馳せる。原文を読んでみたいと思った。コリーが、唯一の財産と引き換えに得たタゴールの詩集。「人はパンだけでに生きるものではない。」という聖句を思った。コリーの得たささやかな幸せに救われる。生きるとは、そして、幸せとは何かを考えさせられる一冊だ。

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