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2009年2月 1日 (日)

宮澤賢治の童話お薦め No. 2 『竜のはなし』(『手紙一』)

 むかし、あるところに住んでいた一匹の竜は、力が強く、恐ろしく、激しい毒を持っていました。竜を見たあらゆる生き物は、見ただけで気を失ってしまったり、毒気にあって死んでしまうほどでした。あるとき、その竜が、良い心を起こして、もう悪いことはしないと誓いました。

 その後の竜の生き様(死に様)は、体中の皮膚がひりひりするほど心身に堪えます。わずか22ページ、言葉数も少ない絵本ですが、皮膚感覚として、また、視覚的に非常に衝撃的な印象を残します。宮澤賢治のファンの一人として、「賢治さんが伝えたかったことの核ではないだろうか」と直感的に思いました。

 戸田幸四郎さんの絵に渾身のパワーを感じます。戸田さんは「あとがき」で「生きものを愛し自然を愛し、まことの道のために、生きつらぬいた賢治の思想の大事な一面を端的に浮き彫りにしている作品ではないでしょうか。」と述べています。
Photo_2  宮澤賢治の世界は、一面的なアプローチでは理解が届かないほど深遠な世界です。戸田さんは「賢治の思想の大事な一面」そして「現代社会にこそとりもどさなければならない賢治の精神」として、『竜のはなし』を描いています。
 一冊の絵本を描くために、どれだけのエネルギーと資料を駆使されたことであろうか…戸田さんの目に見えない努力に思いを馳せました。宮澤賢治作品集の中では『手紙一』という題名だった作品を『竜のはなし』と改題して絵本化した戸田幸四郎さんのただならぬ気迫を感じる絵本です。

 「わが愛する幼な子たちを、情熱的に育もうとしている若きお母さんたちに心をこめて申し上げたい。」と呼びかけて、児童文学者の花岡大学さんが語る『絵本の解説「賢治童話」の「やさしい心」』に心を打たれました。
 花岡さんは、賢治が文学化しようとして書き続けた精神を「あるべき精神」や「捨身の心」、「やさしい心」として分かりやすい言葉に置き換えています。そして、『竜のはなし』をすべてのものを文学的に受け取るナイーブな、やわらかさを持った幼児期にこそ読むべき絵本として推奨しています。
 「このあまりに類書ない宮澤賢治の絵本をとりあげ、その作品のなかにみなぎる「やさしい心」のなんたるかを、幼児たちと、いっしょにめんめんと話し合いながらまちがいなく、つかみとっていただきたい」と力説する花岡大学さんの言葉が私の心の奥底まで響きました。

 この絵本には、まず大人である私たちが自分の人生(生き様)をかけて、また精神作業をかけて向き合うべきでしょう。その人の生き様は、死に様に通じるとも言われています。「このおはなしはおとぎばなしではありません。」という賢治さんの声が聞こえてきそうです。
 ナイーブな心を持った子ども達の方が、この絵本の良き理解者であるかもしれません。子ども達と話し合いながら、子ども達から教えれられることも多いのではないでしょうか。大人である私たちも真っ白な心で向き合うべき絵本だと感じます。今の日本に欠けている大切なものを教えてくれる類書ない絵本としてお勧めの一冊です。

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受信: 2009年2月19日 (木) 15時12分

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