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2009年2月 4日 (水)

5匹のうさぎの「いのちのものがたり」 乳がんと最期まで闘った絵門ゆう子さんの明日へのメッセージ 『うさぎのユック』

 乳がんという病を抱えながら、最期まで前向きに生きた元NHKアナウンサーで、女優の絵門ゆう子さんが遺された明日へのメッセージとして改めて、絵本『うさぎのユック』をご紹介させていただきます。

 絵門ゆう子さんに関するHPはこちらです。

 乳がんの全身転移の症状で治療を続けている元NHKアナウンサーの絵門ゆう子さんの初の書き下ろしのものがたりです。聖路加病院から退院後、小児病棟の子ども達を励ますために朗読に出かけた絵門さんは「うさぎの絵を描きたい」という少女・まゆちゃんに出会いました。「私がうさぎのものがたりを創るから、うさぎの絵を描いてね」とまゆちゃんと交わした約束から命を得た五匹のうさぎ達、ゆっくりのユック、にっこりのニッコ、おっとりのオットー、のんびりのノンコ、がんばり屋のバリー。
「…一緒に生まれる他の兄妹たちのリーダーになるのですよ。…ゆっくりとよーく考えて生きるのですよ。あなたの名前はゆっくりのユック。いいですね。」という天の声に送られて生を受けたユックが主人公の5匹のうさぎのものがたりです。
5匹のうさぎ達が母さんうさぎのお腹の中にいるシーンから絵本は始まります。生まれる前の5匹のうさぎ達には、天使の羽がついています。そして、兄妹どうしおしゃべりをしながら育ってゆきます。一番に母さんうさぎのお腹に生を受けたユックは、四匹のきょうだいたちに押しつぶされるようにお腹の中で育ってゆきました。そのせいで、心臓と右足の機能が弱くなりました。ユックは、光の世界へ誕生するまでに、いくつもの困難を克服しなくてはなりませんでした。生まれる前の天の声、そして、お腹の中での世界、生まれる時の光の合図…私たちの記憶にない声や世界、そして合図が、ていねいに語られ、美しく描かれています。
5匹の兄妹うさぎのリーダーとして生まれたユックは、後ろ足と心臓が弱いにも関わらず、明るく前向きに育ってゆきます。ある日、ユックたちの前にライオンが現れ、ユックは決死の覚悟である方法を思いついて、難を逃れます。さて、ユックはどのような方法を思いついたのでしょうか。右足と心臓のハンディを克服して一生懸命生きてゆくユックの姿を見てください。そして、兄妹たちのユックへの優しさを感じてください。
 生まれる時も、あきらめなかったユック、右足の弱さにも心臓の弱さにも負けなかったユック、ライオンに襲われても希望を失わなかったユック。ユックの姿と作者である絵門ゆう子さんの姿が重なります。
 乳がんの全身転移という症状の中、前向きに生きて、朗読コンサートを通して、多くの人々に勇気を与え続けている絵門さん、頚椎症による麻痺が残る右手で美しい絵を描き続けている画家の山中翔之郎さん、そして、病気の治療に専念して絵を描くことを夢見ている少女・まゆちゃん。5匹のうさぎの「いのちのものがたり」は、三人の夢と希望と勇気が生み出した渾身の「いのちのものがたり」でもあります。
 表紙の絵のユックの耳の星形のしるしは、リーダーの宿命、ユックの姿に無心の決意を感じますか。「希望の光に向かう仲間の輪が広がって、みんなで、ゆっくり、にっこり、おっとり、のんびり、がんばって、長〜く、一緒に生きていけますように」(あとがきより引用)
 ユックたち、5匹のうさぎを通して、絵門さんのメッセージを感じてみませんか。

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