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2009年2月 2日 (月)

珍しく蚊とハエが登場する韓国の美しい絵本  『蚊とうし』

 題名は、『蚊とうし』となっていますが、登場するのは、蚊とハエと牛です。主人公は蚊ともハエとも牛とも言えませんが、小さな害虫である蚊やハエが出てくるお話は、珍しいのではないでしょうか。

 勤勉に働く牛の血を吸っていたハエが、牛のしっぽではたかれ痛い目に遭う場面からお話が始まります。痛い目にあって、苦しんで反省しているハエをあざ笑う蚊。
 「…うしは いっしょうけんめい はたらいて たべているっていうのに、 おまえさんは ひるは ねてばかり。ゆうがたになると なにくわぬかおで ひとさまの血を ただで すってるだけじゃないか。それでも わるいとおもわないのかね。 わたしも やっぱり おまえさんと にたようなもんだから、 こころのそこでは もうしわけないと おもうことが おおいのに…」というハエの言葉が心に残ります。
 蚊やハエが繊細に描かれ、クローズアップされていて実に見事です。こんなにじっくりハエや蚊を見つめることなど現実の生活の中ではあり得ませんから、絵本の中で蚊とハエのリアルな姿をたっぷり楽しませてもらいました。

 蚊は、一日中、畑で辛い仕事をして、疲れた体を草原にどったり横たえている牛を見つけます。夕暮れのひととき、牛にとってはわずかに与えられたくつろぎの時間でしょう。草原の木陰で気持ち良さそうに目をつぶって休んでいる牛の姿が田園風景の中に小さく描かれています。
 蚊は、そんな牛に「蚊の大将さまのお出ましだ」と言いながら近づき、ブスリブスリと牛を刺します。「やーい、へのかっぱ。」とますます得意気な蚊。そして、牛の血をチュウチュウ吸い、ゴクゴク飲みます。ハエに大意張りする蚊。さて、その後、蚊はどうなったでしょうか。それは、この絵本を読んでからのお楽しみです。

 翻訳者のおおたけきよみさんの作品解説に作者のヒョン・ドンヨムが労働運動の活動家として組合の幹部をしていたことが記されています。そして、『蚊とうし』を「勤勉で愚直な牛と他の人の血を吸って生きる蚊やハエを対比させながら、労働者の気持ちを代弁させているといえるでしょう」と解説しています。
 『ソリちゃんのチュソク』でチマチョゴリを着た可愛いソリちゃんを描いたイ・オクベの絵が添えられた韓国の絵本です。珍しく蚊とハエが登場するお話を美しい絵本を通して、お子さんと楽しんでみませんか。

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