バーキスという一匹の犬を通して姉と弟が心を交し合う暖かい物語 『こいぬのバーキス』
翻訳者の劉優貴子氏は、クレア・ターレー・ニューベリーの復刻を記念した出版フェアが開かれているボストンのお気に入りの書店でこいぬのバーキスと出会いました。
劉氏は「こねこのミトン」に続き、ニューベリーの本を日本の子どもたちのために翻訳しました。1938年に出版された本ですが、今の子どもたちの心に通う暖かいまなざしを感じる一冊です。
弟のジェームズの9歳の誕生日におじさんから贈られたコッカスパニエルのバーキス、ジェームスは、バーキスを独り占めしようとして姉のネル・ジーンと大喧嘩をします。その原因は姉のネル・ジーンにもありました。ネル・ジーンの飼っているこねこのエドワードをネル・ジーンが独り占めしていたからです。
ところがある日、ジェームズがちょっと目を離したすきにバーキスが外に出て、川に落ちてしまいます。その一部始終をみていたネル・ジーンが、見かねてバーキスを助け出します。命拾いをしたバーキスを通して、姉と弟がこいぬのバーキスとこねこのエドワードを通して、心を交し合うことになりました。どんな心の交し合いがなされたかは、この絵本を読んでのお楽しみです。
この絵本に描かれたイラストに、こねこやこいぬを、そして姉と弟を見つめるニューベリーの優しいまなざしが感じられるほっとする一冊です。
わが家でもスピッツとシャムネコを飼っていた時期がありましたが、いつの間にか仲良くなっていました。シャムネコがいなくなって、必死で探していたら、スピッツの白ちゃんの犬小屋のなかで白ちゃんに包まれるようにお昼ねをしていました。
こいぬのバーキスとこねこのエドワードもきっと仲良しになってゆくことでしょう。犬や猫が大好きな方には、たまらなくかわいいイラストだと思います。夜、おやすみなさいを言う前に読むと素敵な夢をみることができそうな一冊です。
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