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2009年2月 1日 (日)

宮沢賢治の童話のお薦め No. 1 『虔十公園林』

 「好きな作歌は?」と問われたとき、真っ先に浮かぶのが宮澤賢治、そして、アンデルセン。折に触れてくり返し読んでいます。賢治の詩は難解ですが、童話はやさしく、あたたかく、国籍不明のあたたかさに満ちているように感じます。

 賢治の童話で好きなベスト3のひとつは、『虔十公園林』です。賢治童話は、小林敏也さんの画本・宮澤賢治シリーズ  15巻セットがお薦めですが、『虔十公園林』は伊藤亘氏のペーパーレリーフ作品をお薦めします。

 杉の黒い立派な緑、さわやかな匂い、夏のすずしい陰、月光色の芝生。「虔十公園林」は、虔十が杉の木を植えてから何十年もの月日が流れた今も、雨が降っては、すき徹る冷たい雫を、みじかい草にポタリポタリと落とし、お日さまが輝いては、新しい奇麗な空気をさわやかに吐き出しています。

 虔十が亡くなり、村に鉄道が通り、瀬戸物の工場や製糸工場が出来ました。畑や田が潰れて家が建ち並びました。村がすっかり変わってしまっても、虔十が植えた杉の木の列だけは立派に残りました。
 虔十が植えた杉の木の列に、『虔十公園林』と名づけた博士が昔を思いだしながら、「虔十という人は少し足りないと私らは思っていたのです。いつでもはあはあと笑って歩いている人でした。毎日丁度この辺に立って私らの遊ぶのを見ていたのです。この杉もみんなその人が植えたのだそうです。ああ、全く誰が賢く誰が賢くないかは分かりません。ただ、どこまでも十力の作用は不思議です。ここはもういつまでも子供たちの美しい公園です。」と語ります。十力とは、仏教用語で、「仏に特有な10種の智力のこと」、その測り知れない力が働いた虔十とは・・・。
 いつも縄の帯をしめて、笑いながら、杜の中や畑の間をゆっくり歩いている虔十、子ども達に馬鹿にされてはあはあ息だけついてごまかしながら笑う虔十、一生懸命に穴を掘り、兄さんの言う通りに苗を植える虔十、人の悪い平二に反対されても杉の苗を育て続ける虔十、無心に杉の木の枝打ちをする虔十、枝打ちをした杉の列に集まる子ども達を隠れて見ている虔十・・・私は、この話を読むたびに、心の底から暖かくなるのを感じます。最も無力なものに、最も大きな力が働くことを感じるからです。

 伊藤亘氏のペーパーレリーフによって描かれた虔十は、まるで仏像のようです。自らの名を「ケンジュウ」と表記することもあった宮澤賢治が理想とする人間像を伊藤亘氏のペーパーレリーフ作品を通して味わってみてはいかがでしょうか。

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