人間の孤独、運命、そして、本当の人間のやさしさとは何かを考えさせられる絵本 『ほほえむ魚』
ぼくは、ぼくだけにほほえむ魚に出会った。魚は、いつもぼくを待っていた。じっと見つめるぼくだけのまなざしを。ぼくは、ぼくだけにほほえむ魚を小さな水槽に入れて、家につれ帰った。「犬のように忠実で、猫みたいに心がかよい、恋人のように愛しい魚」とぼくの生活が始まった。
眠ったはずの魚は、水槽ごと緑色に輝きながら、空中を漂ってゆく。ぼくは、あわてて追いかける。魚のあとを追って、真夜中の通りをさまようぼく、幼い頃踊ったダンスのステップを思い出したぼく、木立の中でかくれんぼをするぼく、朝露でズボンが濡れるまで草むらを歩くぼく、緑色に輝く魚といっしょに大海原を仲良く泳ぐぼく…。大海原を自由自在に泳ぎ回って、ぼくは、はっと気がついた。「ぼくも大きな水槽に囚われたちいさな魚だったんだ」と。
めざめたぼくとほほえむ魚のその後は…。
『ほほえむ魚』は、「犬のように忠実で、猫みたいに心がかよい、恋人のように愛しい魚」とぼくの不思議な物語です。人間の孤独と運命を幻想的で美しい絵とユーモラスな語りで綴った物語、自分の孤独と運命から目をそらさずに向き合った作者だからこそ綴れる物語ではないでしょうか。人間の孤独、運命、そして、本当の人間のやさしさとは何かを考えさせられます
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