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2009年2月 1日 (日)

宮澤賢治童話お薦め No. 4 たかしたかこさんのやさしい色彩の絵の中で、美しく昇華された賢治の死生観や宇宙観を感じてみませんか。

「うずのしゅげを知っていますか。」という語りで始まる宮澤賢治の『おきなぐさ』の物語です。「おきなぐさ」と呼ばれる「うずのしゅげ」を見たことのない私は、この絵本を開いて、その花の美しさにすっかり見入ってしまいました。
 「ごらんなさい。この花は黒繻子ででもこしらえた変わり型のコップのように見えますが、その黒いのは、たとえば葡萄酒が黒く見えるのと同じです。」という賢治の語りに、私の想像力が及ばなかった微妙な色合いや蟻と語り合う花びらの動きが繊細に描かれています。

 賢治は、自然の中の草花や小さな生き物から言葉を聞くことができる不思議な能力の持ち主でした。小岩井農場の七ツ森のいちばん西のはずれの西側の枯れ草の中に咲く二本の「うずのしゅげ」の言葉に耳を傾けています。
 「お日さまは何べんも雲にかくされて銀の鏡のように白く光ったり、又かがやいて大きな宝石のように蒼ぞらの淵にかかったりしました。」と雲や空の動きを詩的に語り、「その変幻の光の奇術の中で、夢よりもしずかにはなしました。」と賢治の語りは続きます。
 「変幻の光の奇術」の空の光と雲と小岩井農場の西の果ての風景が虹のような美しい色合いで描かれていて、賢治の世界にすっぽりと浸ってしまうことができそうです。
 雲を見ながら、雲のようすを語り合う「うずのしゅげ」、そこへ一匹の雲雀がやってきます。雲雀と語り合う「うずのしゅげ」、それから二ヵ月後の「うずのしゅげ」は、すっかりふさふさした銀の房になっていました。
 「どうです。飛んでゆくのはいやですか。」と問う雲雀に「なんともありません。僕たちの仕事はもう済んだんです。」と答える「うずのしゅげ」の銀の房。
「…飛んだってどこへ行ったって、野はらはお日さんのひかりで一杯ですよ。僕たちばらばらになろうたって、どこかのたまり水の上に落ちようたって、お日さんちゃんと見ていらっしゃるんですよ。」という「うずのしゅげ」。
 「うずのしゅげ」は、奇麗なすきとおった風とともに北の方へ飛んでゆきました。さて、賢治の語る「うずのしゅげ」は、それからどうなったのでしょうか。
 
 賢治の作品は、間口が狭いと感じることがたびたびあります。その狭い間口を見つけてもすんなり入っていけるわけではありませんが、絵の力によって、賢治の語る世界に入ることができることを知らされました。

 賢治の死生観や宇宙観が、『おきなぐさ/いちょうの実』という短い物語の中にちりばめられていることを感じます。たかしたかこさんのやさしい色彩の絵の中で、美しく昇華された賢治の死生観や宇宙観を感じてみませんか。

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