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2009年3月12日 (木)

ケイト・ディカミロ『きいてほしいの、あたしのこと -ウィン・ディキシーのいた夏』

 この物語の主人公は、アメリカ南部フロリダ州の小さな町ナオミに引っ越してきた10歳の少女インディア・オパール・ブローニ。物語の中では、オパールと呼ばれている。父親は、この地の教会ナオミ・オープンアームズ・バプティスト教会の牧師さん。母親は、何年も前に家出をしてしまった。父親は、教会のことばかり考えているので、オパールは心の中で<牧師さん>と呼んでいる。
 そこに、物語の副題となっているウィン・ディキシーの登場だ。ウィン・ディキシーは、オパールがナオミに引っ越して来たばかりの頃、スーパーで偶然出会った一匹の野良犬。しっぽをゆっさゆっさと揺らし、スーパーの棚の野菜やくだものをころがしていた。体は大きいけれど、ひどくやせていて、あばら骨が浮き出ている。体中、あっちこっちはげちょろけ。その犬が、オパールを見て、歯が全部見えるくらい、口をにやーっと開けて、笑った。そのおかしな犬に一目ぼれしたオパールは、スーパーの何ちなんでウィン・ディキシーと名づけて飼うことに・・・。

 ウィン・ディキシーは、笑うことと、人の話に耳を傾けることができる犬だった。そして、友達作りの名人(犬)。

 オパールは、ウィン・ディキシーを通して、町の図書館の館長をしているミス・フラニーというおばあさんや、魔女と呼ばれているグロリアおばあさん、ペットショップの店長のオティスと知り合いになっていく。皆、それぞれに人付き合いが苦手な大人たちだ。そして、子ども達とも。五歳のスイーティパイ、いじわるなスティーヴィとダンラップ、いつもしかめっ面をしているアマンダ・・・。オパールが出会った人たちに心を開いていくことで、父親の牧師さんの心までほぐされていく。二人とも、母親(妻)の不在感に苛まれながら生きていたのだ。
 
 アメリカの南部フロリダ州の小さな町ナオミを舞台に、母親を失い癒せない心の傷を抱えた少女オパールが、ウィン・ディキシーという一匹の犬との触れ合いを通して、心を開き、他者の孤独感や心の痛みに触れ、自分の孤独感と向き合いながら、生きることの喜びと哀しみを知っていくひと夏の心あたたまる物語。
 
 作者のケイト・ディカミロは、この本のことを、子ども時代をすごしたアメリカの「南部と、犬と、友情への讃歌」と言っていることが訳者あとがきに記されている。2001年ニューベリー賞最終候補作品、パブリッシャーズ・ウィークリー紙ベスト・ブック・オブ・ザ・イヤーなど数々の賞を受賞しベストセラーとなった作品だ。
 ケイト・ディカミロは、人間の根源的孤独感を原点に人生の悲哀と人間の愛への深い洞察に満ちた児童向けの作品を生み出すことができる稀有な才能を持つ作家ではないだろうか。深い孤独感が癒される物語として、子ども達だけでなく、大人へもお薦めの一冊だ。

追記 本作品はアメリカで2004年に映画化されています。

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