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2009年3月18日 (水)

三田誠広著『星の王子さまの恋愛論』(集英社文庫)  かんじんなことは目に見えない サン・テグジュペリの恋愛論

星の王子さまの恋愛論 (集英社文庫) Book 星の王子さまの恋愛論 (集英社文庫)

著者:三田 誠広
販売元:集英社
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 『星の王子さま』の物語の中には珠玉のような言葉がちりばめられている。その一つとして、真っ先に浮かぶのが、王子さまと砂漠で出会ったキツネが別れの時に語る「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ。」という言葉だろう。

 本書は、「目に見えないかんじんなこと」とは何か、作者であるサン・テグジュペリが込めた恋愛論といえる部分を中心に『星の王子さま』の物語を紐解いていく。著者である三田誠広氏は、まず、サン・テグジュペリの幼年期の生い立ちや成人後の作家として、また、パイロットとしての生き様を辿り、古いお城で過ごした幼年期やパイロットとしての不時着の経験、婚約破棄や結婚生活の実質上の破綻などが物語の原点となっていることを明らかにしている。『星の王子さま』が出版された1943年はサン・テグジュペリの祖国フランスがナチス・ドイツの支配下にあったという時代背景が物語りに影を落としていることも。続いて、その作品である『南方郵便機』や『夜間飛行』を同じ小説家という立場から解釈し、『星の王子さま』の物語の原型をくきやかにあぶり出していく。
 本書の第1章から終章までの8章を通して浮き彫りにされるのは、人間としてのサン・テグジュペリの深い孤独感である。『星の王子さま』の物語の語り手であるパイロットも王子さまもキツネも花もヘビも、皆、孤独な存在だ。また、その出会いは、いずれも唐突で、ヘビを除いて、その別れは切なく哀しい。本書において著者は、第2章の「星の王子さまはどこから来たか」と第4章の「花はどこから来たか」という自らの問いに端を発して、サン・テグジュペリが物語りに込めた目に見えない恋愛の「かんじんなこと」(本質)を説き明かしている。

 しかし、本書に端的な恋愛指南を求めてはならない。著者は、プラトンのイデアという言葉を用いて説明しているが、『星の王子さま』に込められた著者の思いは、読者の想像をはるかに超えて深い。著者によると『星の王子さま』は、サン・テグジュペリの深い孤独感の中から生み出された物語、つまり、目に見える風景ではなく、心の中で展開された物語だからこそ、目で見るのではなく、心で見なくてはならないと言う。

 難解な哲学用語を用いているが、サン・テグジュペリの恋愛論を分かりやすい言葉で紐解いている。『星の王子さま』は何度読んでも不思議な物語だが、本書を読むと、物語の中にちりばめられている人生や愛の本質をさらに深く味わうことができる。著者自らの恋愛と結婚生活、作家としての生活を語りつつ、大人になっても子供の感受性を失っていない大人として、物語の作者であるサン・テグジュペリの心に寄り添う著者の視線があたたかい。本書を読んで、砂漠の中にある見えない井戸のような、また、星に咲いている花のような目に見えないサン・テグジュペリの深い思いに耳を傾けてみませんか。人を愛することの本質を知りたいあなたにお薦めしたい。

星の王子さま (講談社青い鳥文庫) Book 星の王子さま (講談社青い鳥文庫)

著者:A.D. サン=テグジュペリ
販売元:講談社
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