奇想天外な夢の絵本 ― ヘンな気分だけど元気いっぱいの朝だよ!
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ヘンなあさ (キラキラえほん 7) 著者:笹 公人 |
眠りの波の朝凪が訪れるように目覚めて、また、眠りについて、それまで見ていた夢の世界に入っていくようなことがたまにありますが、この絵本には、そんな夢が大胆に描かれています。
子ども部屋のベッドに眠っている男の子は、小学校一年生位かな。
大好きなメロンの夢を見ています。そのメロンが一体どこにあると思いますか。それも山ほど積まれているのです。そんな夢から覚めて、もう一眠り。あれれ?? 今度は、お母さんが宇宙服を着て、宇宙船の中に登場、そして、その宇宙船の着陸地点が何とも愉快。
男の子は、「こわいゆめでも みていたの? はやく がっこうへ いきなさい」と言うお母さんの声で、まさに奇想天外な夢から目覚めました。
あれ? ゆめか。というヘンな気分、そして、学校に向う男の子は、元気いっぱい。絵本の最後のページで、校長先生の頭の真ん中に貼られたバンドエイドが、またしても愉快なのです。
夢か現か。見た夢を思い出すことって案外難しいものではないでしょうか。こんなに奇想天外な夢を見て覚えていたら、この絵本の僕のように私もきっと元気になるだろうなぁ。
そんな夢を思いついたのは一体誰でしょう。
それは、歌人で、ミュージシャン、ラジオDJとしても活躍中の笹公人氏。しかも、初めての絵本です。言葉がリズミカルに語られているのは、短歌で鍛えた語感にあるのでしょうか。子どもも大人も楽しめる絵本として、お薦めします。
そして、大人のあなたには、笹公人氏の歌集もお薦め。
・第一歌集「念力家族」
・第二歌集「念力図鑑」
・第三歌集「抒情の奇妙な冒険」
日本古来の短詩形である短歌という器が新しい要素を受け入れて、脈々と日本の文化を伝承しています。ただし、ユニークで面白いからという理由で、単純に笹氏の短歌を模倣することはお勧めしません。俵万智氏以降、短歌に口語が用いられるようになり、自由自在な表現が試みられていますが、伝統的な短歌を学ぶという地道な努力は欠かせないからです。
子ども達には、リズミカルで美しい日本語に触れて欲しいと思っています。笹氏より以前に、歌人の俵万智氏、東直子氏、穂村弘氏が短歌という分野を超えてマルチな才能を発揮していますので、短歌を通して鍛えた語感をもって、絵本や児童書の分野での今後の活躍を期待しています。笹氏の次の絵本がとても楽しみです。
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