思い出の絵本 No.11 『八月がくるたびに』初版、名作の愛蔵版、新・名作の愛蔵版を再読して思うこと
小学校4年生の時、夏休みの課題図書で読んだ『八月がくるたびに』を8月9日に再読しようと思って、図書館に予約を入れて、届いた本が記憶に残っている本と絵の雰囲気が違っているような気がして、改めて、図書館から初版(1971年)、名作の愛蔵版(1978年)、新・名作の愛蔵版(2001年)を取り寄せて再読しました。(8月9日原爆を記憶にとどめるためには、こちら。)
3冊の表紙の写真です。名作愛蔵版1978年から表紙の絵が変わっています。文章(語り)は細かいチェックはしていませんが、同じでした。初版の表紙の強烈な印象が今でも残っていましたので、イラストの雰囲気が大きく変わっています。名作愛蔵版と新・名作愛蔵版のイラストはだいたい同じでした。初版は、全体を通して、やや抽象的で個性的なイラストです。原爆の悲惨さを絵が強烈に語っていることを感じます。どちらのイラストも芸術性は高いものだと思います。
本を開いて標題のページから、初版は抽象的で強烈な印象が残りますが、愛蔵版→新・愛蔵版へと具体的なイメージになってきていることを感じました。初版は戦後25年目、以後、戦争からの年月を経るにつれて、子ども達に具体的なイメージを提示していく必要があって、描きかえられたのかもしれません。これからの子ども達に長く読み継いで欲しいという願いから、こうした改編がなされたのかもしれません。
きぬえちゃんが山下のおばさんに着せてもらった赤いワンピースのイラスト、きぬえときよしの父帰還のイラストです。(いずれも右側が初版、左側が愛蔵版)
長崎の被爆体験を語った児童文学作品として、再版されて30余年・・・原爆を語ったことに意義がある作品でもありますが、物語としてもすぐれているから読み継がれてきたのだと思います。今年の8月9日、40年ぶりに愛蔵版を再読したときには、初版のイラストを懐かしく思う気持ちが強かったのですが、3冊を比べながら再読してみて、イラストの具体化を通して、『八月がくるたびに』の愛蔵版、新・名作愛蔵版に今の子ども達への配慮を感じました。(配慮が成功している例ではないかと思います。)また、新・名作愛蔵版は文字が大きくなって読みやすくなっています。
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コメント
まざあぐうすさん、
ご無沙汰しております。
rmaria0911です。
久しぶりに書評を読ませて頂きました。
やはり、ほっとしますね。
本日より、楽天ブログ再開いたします。
また、時々お立ち寄りくださいね。
投稿: rmaria0911 | 2009年9月28日 (月) 17時15分
rmaria0911さん
お久しぶりです。
コメントをいただき、こちらこそ、ほっと致しました。
楽天ブログも再開なさるとのこと、安心しました。
どうぞこれからもよろしくお願い致します。
投稿: 管理人:まざあぐうす | 2009年9月28日 (月) 23時25分