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2010年11月

2010年11月30日 (火)

久しぶりのレビュー 絵本(チェ・ヒェンラン・おおたけきよみ訳)『十長生をたずねて』(岩崎書店)

 久しぶりに新作絵本のレビューを書いてみました。20歳になった息子に読んであげたら、最後まで聞いてくれました。お隣の国韓国の心があたたまる美しい絵本です。

十長生をたずねて Book 十長生をたずねて

著者:チェ・ヒャンラン
販売元:岩崎書店
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 「十長生」を集めておじいちゃんに持っていってあげたい!
 この絵本は、大好きなおじいちゃんのために、十長生を集める旅に出かける女の子の物語。おじいちゃんは、病気になって、遠くの病院に入院しています。
 
 お隣の国韓国では、長生きしたり、病気にならない十のものを「十長生」(韓国語でシプチャンセン)と呼び、古くから生活の中の道具に刻んできました。絵本の中のおじいちゃんとおばあちゃんの部屋の枕や壁、机の上や裁縫箱の中を見てください。不老長寿や健康を願う韓国の人々の気持ちが生活の中で息づいていることが分かるでしょう。おじいちゃんの回復を願う女の子の前に、十長生が次々と姿を現します。十長生が全部集まったその時に不思議なことが・・・。

 作者は、2003年に『あちこちおいしい世界旅行』で第7回「良い子どもの本」原稿公募企画部門で大賞を受賞したチェ・ヒャンラン。刺繍や螺鈿細工と絵のコラボレーションにより、鶴や鹿、太陽や岩などの十長生をかわいらしく、美しく、個性的に描き出しています。翻訳は、『韓国の絵本10選』(アートン新社)『とらとほしがき』『いぬとねこ』で知られるおおたけきよみ。ていねいで、美しい日本語が好ましく感じられます。

 読み終えた時、心があたたかく、明るい気持ちに満たされました。韓国の人々が文化として受け継いできた十長生が個性的に表現された絵本として、また、おじいちゃんと孫の心の交流を描いたあたたかい絵本として、お薦めの一冊です。

(以上、ほのぼの文庫管理人のまざあぐうす(いづみ)が、オンライン書店ビーケーワンに投稿した書評です。)

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