知能に重い障害を持つ子どもが描いた画期的な絵本
この絵本の舞台は、知能に重い障害を持つ子ども達の施設「止揚学園」。
昭和37年(1962年)、多くの人の協力を得て、福井達雨氏により設立されました。共同体制を持つ施設で、障害児差別に対する抵抗運動、教育運動を起こすなど、真摯な活動を続けています。
ある日、止揚学園にコリ―の子犬がもらわれて来ました。ボスと名付け、子ども達はうれしくてたまりませんが、ボスは元気がなく、ごはんも食べないし、声も出しません。主人公のいっちゃんは、小さい時に、両親と離れて、この止揚学園にきたので、ボスがさびしくてごはんを食べない気持ちがよく分かります。
いっちゃんや学園の子ども達とボスのほのぼのとしたふれあいが描かれています。ところが、皆にだいじに育てられたボスが突然病気で亡くなります。学園の子ども達は、その死をどう受け止めていくのでしょうか。
燃えるような明るい色、心をえぐるような激しい色。
児童指導員の三好保先生の指導により、学園の子どものひとりである竹内雅輝君が描きました。知能に重い障害を持つ子どもが描いた画期的な絵本です。明るく強烈な色彩で描かれた絵に、アール・ブリュット(生の芸術)の輝きを感じました。正式な美術教育を受けていないがゆえに、創造性の源泉からほとばしる自由な表現ができるのでしょうか。絵本を開くと、ことばよりも強く、絵が心に迫って来ます。絵本には、幼い頃から親元を離れて暮らさなくてはならなかった子ども達の深い喜びや愛、悲しみややりきれなさが漲っています。
1980年、その年度に出版界に新風を吹き込み、書店の売り場活性化に貢献した出版物と発行者を顕彰する書店新風賞を受賞しています。絵本の表紙や見返しに印刷してある和紙の模様の元は学園の子どもたちが、木の実や草花からしぼり取った染料で作った和紙です。本編のみならず、表紙や見返し、そして、止揚学園の園長である福井達雨氏のあとがき「怖い顔がやさしい顔にかわった」まで、すべてに深い感動を覚えました。
社会から隔離されなくては生きていけない子ども達の存在を忘れてはならないと思います。この子らが私たちと共に生きていける社会こそが、本当の意味で幸せな社会なのではないでしょうか。この子らが置かれている環境に思いを馳せてみませんか。多くの読者の心に感動を与え、問題意識を喚起する絵本として、この絵本が長く愛されることを願ってやみません。止揚学園の子ども達による絵本『みんなみんなぼくのともだち』、『みなみの島へいったんや』とあわせて、お薦めします。
(2011年8月28日オンライン書店ビーケーワンに、ほのぼの文庫の管理人まざあぐうすが寄稿しました。)
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ボスがきた 著者:まじま かつみ |
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