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2011年9月 8日 (木)

絵本『車いすのレイチェル』~障害児・者をテーマとした児童文学作品の課題の提示

  レイチェルは足が不自由な女の子。
 車いすを使って、みんなと同じ小学校に通っています。スクールバスにいっしょに乗ることができないので、お母さんが車で送り迎えをしていますが、授業時間も、そうじの時間もみんなと同じように過ごします。モルモットにえさをやる係もします。ときどき、友だちに車いすを押してもらうこともありますが、スロープはレイチェルの車いすも、みんなと同じように通っていきます。表紙にはレイチェルが車いすにすわって、手を上げている姿が生き生きと描かれています。授業でも積極的に発言している様子が伺われます。
 家庭でも家族といっしょに同じように過ごし、旅行もします。ガールスカウトの活動にも加わり、水泳や乗馬も楽しみます。レイチェルは、足に障害を抱えていても普通の子ども達と同じように、将来への夢と希望を持っています。レイチェルとみんなの違いは車いすに乗っている、ただ、それだけ。
 作者のファンショーも10歳の時から車いすを使っています。本書は「障害児も普通児と同じように、活動的な人生がおくれる社会になってほしいと願ってかかれた」絵本です。挿絵を描いたチャールトンは、この本の絵をかくために、学校や家庭をたずねて多くの身障児と話し合ったそうです。絵をよく見ると、そうじの時間に、みんなが机やイスを運んでいる時、車いすに座って、流しで食器を洗っているレイチェルの姿が描かれています。また、プールでは、両肩に浮き具をつけて真剣に泳ぐレイチェルとそれを見守る白衣の専門家の姿が描かれています。遊びではなく、それがリハビリテ―ション(機能訓練)であることが分かります。チャールトンの絵はレイチェルの努力を語り、本文の背後にある身障児の世界に読者を誘います。
 日本では邑田晶子氏の訳により、1979年に出版されました。同じ時期の日本で1980年に出版された絵本『わたし いややねん』(吉村敬子・文・松下香住・絵・偕成社刊)では、車いすに乗ることへの恥じらいや深い悲しみ、そして、社会の不条理が語られており、イギリスと日本の社会の在り方の違いが浮き彫りにされます。
日本の社会は、未だに障害児・者にとって多くの問題を抱えています。「ハンディを負った子を理解するための本」の一冊であるこの絵本を多くの子どもたちに読んでほしい、そして、レイチェルのような子どもの存在とその豊かな生き方を知ってほしいと思います。しかし、本書は現在絶版です。あまりにまっすぐに、素朴に障害を語り、描き過ぎているのでしょうか。『わたし いややねん』(吉村敬子・文・松下香住・絵)が、今も読み継がれているのとは好対照です。子どもたちだけでなく多くの読者に長く読み継がれていくためには、障害児・者をどのように語り、描いたらよいのか?今後の障害児・者をテーマとした児童文学作品の課題が提示されているように思えます。

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