« 2015年8月 | トップページ | 2016年7月 »

2016年3月

2016年3月22日 (火)

2013年度10回(2014年1月)正会員ゼミ「アメリカ絵本の黄金期⑧ ロバート・マックロスキー 講師:工藤左千夫」

 2年前の3月22日、大学卒業前に帰省した息子に絵本の読み聞かせをしました。ロバート・マックロスキーの絵本です。以下、絵本児童文学研究センターのレポートです。
 2012年度正会員ゼミでアメリカの絵本作家が特集され、ワンダ・ガアグに始まり、マージョリー・フラック、バージニア・リー・バートン、マリー・ホール・エッツ、モーリス・センダックで年度末を迎え、2013年度正会員ゼミでも引き続きアメリカの絵本作家が取り上げられ、レオ・レオニ、モーリス・センダック、そして、今回のロバート・マックロスキーで特集の最後を迎えることになった。
 この特集の中でマックロスキーは唯一知らない作家だった。退院直後の憔悴しきった工藤先生があらん限りの力を振り絞って読み聞かせをされた。その読み聞かせを通して初めてマックロスキーの絵本の世界に触れた。実に清く、正しく、明るく、まっすぐな世界だ。一点の曇りもない、清澄な世界に触れ、心が洗われるようだった。
Photo
 自分の子どもたちにも幼いころ、マックロスキーの絵本の読み語りをしたかった。どうしても聞いてほしくて、大学の卒業式を控えた息子に『かもさんおとおり』を聞いてもらった。息子は黙って聞いてくれた。感想は敢えて聞かなかったが、マックロスキーの絵本を声に出して読んだことで、その日の夜はいい夢が見ることができるのではないかと、そんな余韻が残った。
 『かもさんおとおり』はボストンが舞台の作品である。Public Gardenには、かもさん達の銅像があり、記念撮影をする人が今も後を絶たない。また、毎年母の日に開催されるDuckling Day Paradeではカモの扮装をした子どもたちによるパレードが行われている。1941年の発表以来、ボストン市民だけでなく、アメリカで、また、世界中で愛されてきた絵本だ。
 マックロスキーは、『かもさんおとおり』(1941年)と『すばらしいとき』(1957年)で2度、コルデコット賞を受賞している。他の絵本も読んでみた。親子でブルーベリー摘みにやってきたSalと子グマがお母さん探しをする『サリーのこけももつみ』は、それぞれの表情や仕草が繊細なタッチで描かれていて、実にいきいきとしている。クマの母親もSalの母親も、温かい目で子どもたちを見守っている。Salの乳歯が抜けるエピソードと海辺を描いた『海辺のあさ』では、父親のあたたかいまなざしの中で、Salが父親にも、鳥やアザラシにも誇らしげに語りかけるシーンが心に残る。メイン州の島の自然と暮らしを描いた『すばらしいとき』ではマックロスキーの細やかな視線や繊細に働く五感が感じられた。
 マックロスキーの繊細な五感が創りだした世界は、自然界も人間の世界も愛と善意に満ちている。作品を読むごとに空が晴れ渡っていくような、そんな思いを味わった。今の日本では、自然が津波や地震という脅威をもって迫り、科学技術も原発事故という計り知れない不安をもたらしている。今の日本に育つ子どもたちにマックロスキーの絵本を読み聞かせたい。なぜ、アメリカ絵本の黄金期の最後にマックロスキーが取り上げられたのか。その意義が愛と善意に満ちたマックロスキーの絵本の世界の中に感じられた。マックロスキーに続いて、絵本・児童文学研究センターの25周年について語られたが、マックロスキーの絵本の世界とセンターの設立趣意が私の中で重なり、センターの継続事業の深い意義を再認識させられた。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2015年8月 | トップページ | 2016年7月 »