新藤悦子著『南方熊楠: 森羅万象の探究者 (伝記を読もう) 』– 2019/4/1
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本業の英語科教員としての仕事があわただしく、ブログの更新を滞っていましたが、休校中の生徒たちに薦めたい一冊を紹介させていただきます。児童文学作家の新藤悦子さんが2019年4月1日にあかね書房から出版された伝記『南方熊楠: 森羅万象の探究者 (伝記を読もう) 』です。以下、まざあぐうすの書評です。
書評:南方熊楠~自らの才能を生き抜く
トルコや中近東に関するノンフィクションやファンタジーなど様々な作品を発表してきた児童文学作家の新藤悦子さんが南方熊楠の伝記を手がけました。子供向けの伝記は初めての試みだそうです。
博物学者、生物学者、民俗学者して知られる南方熊楠は、実際には一言で言い尽くせない肩書をもつ人物です。1867年、和歌山城のそばで生まれた熊楠は、子どもの頃、驚異的な記憶力を持つ神童でした。並外れた読書家で、旧制中学入学前に『和漢三才図会』『本草綱目』『諸国名所図会』『大和本草』『太平記』を書き写したほどの筆写魔でもありました。
海外に渡ることが珍しい時代にアメリカやイギリスに渡り、英語やフランス語をはじめ、行く先々のことばを駆使して、様々なことを独学で学び、世界各地で発見、採集した地衣・菌類や、科学史・民俗学・人類学に関する英文論考を、『ネイチャー』と『ノーツ・アンド・クエリーズ(英語版)』に次々と寄稿しています。自然保護運動における先達として、生態学(ecology)を早くから日本に導入したことでも有名です。
限られた人生の時間の中で、どうしてこんなにたくさんのことができたのでしょう。その疑問に答えるかのように、生物学者としての熊楠、民俗学者としての熊楠、自然保護活動家としての熊楠、また、家庭人としての熊楠の姿を臨場感あふれる語り口で、浮き彫りにしています。エネルギッシュで、時にエキセントリックな南方熊楠の生きざまを通して、「学ぶ」ことの意味や「自分の才能を生き抜く」ことの大切について考えさせられる伝記です。
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