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2021年3月21日 (日)

『しまふくろうのみずうみ』~幼児から大人まで魂を揺さぶるような感動を与える美しい絵本

 「ほのぼの文庫」を訪れてくださり、ありがとうございます。

 

 本業多忙のため、ブログの更新ができずにいましたが、また、児童書を読む機会を得ています。引き続き、よろしくお願い致します。

 

 久しぶりに昔話の『かさじぞう』を読んだあと、絵本を再読しています。今日は、北海道在住の版画家手島圭三郎氏の『しまふくろうのみずうみ』を紹介させていただきます。

 

 

 『しまふくろうのみずうみ』は、北海道在住の版画家手島圭三郎氏が初めて手掛けた絵本である。
 北海道の深い山奥の誰も知らない湖を舞台として描かれている。獣たちが寝静まった頃、しまふくろうの親子が登場し、子どものために夜明けまで何度も交代で魚を捕りに行くお父さんとお母さんの姿が版画を通して、力強く再現されている。
 自然界の中で生きる糧を得ることは至難の業である。餌が見つからず、木に止まって体を休めるお父さん、そして、お腹を空かせて鳴く子ども、お母さんの鳴き声も響く。その声に勇気を得たかのように再び飛び立つお父さんが獲物を捕る場面では、羽を広げる音や水の音、魚が跳ねる音が絵本の中から聞こえてくるような迫力を持って描かれている。魚を捕った後に生じる湖面の波紋が美しく、心に安らぎをもたらすのも特徴である。
 手島氏は、北海道オホーツク沿岸の紋別市に生まれ、国鉄職員の父の転勤により、網走管内の村や集落で暮らしてきた。北の厳しい自然の中で育ち、幼いころから絵を描くことを好み、自然の中で昆虫や魚や虫と戯れる孤独な遊びを好んだ。成人して中学の美術教師となり、油絵を描く画家から木版画を彫る版画家に転向し、42歳の時に版画の創作に専念するために教師の職を自ら辞する。
 最初に、氏の版画に絵本の可能性を見い出したのは、編集者の松居友氏であった。氏が日本版画協会展に出品していた作品-湖を背景に月あかりの中を飛ぶシマフクロウの姿に感動し、絵本の作成を依頼した。松居氏のねらいは、幼児から大人まで読める絵本であった。従来の絵本の世界の動物は、中身が皆、人間である。松居氏は、これまでの童画を打ち破るような原始的な世界を描いてほしいと願い出た。そのような経緯で『しまふくろうのみずうみ』が出版の運びとなった。児童文学の世界からは、子どもの眼を通してみたものを表現していくべきではないかとの厳しい批判が出たが、そうした批判をよそに、デビュー作にして日本絵本賞を受賞している。
 自然の厳しさとしまふくろうの父親の力強さ、自然が見せる安らぎとしまふくろうの母親の存在、絵本の中で、父性と母性が調和して、しまふくろうの親子のあたたかい営みが感じられる絵本である。幼児から大人まで魂を揺さぶるような感動を与える美しい絵本である。

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