宮澤賢治の童話お薦め No. 3 『雪渡り』人の子と狐たちの出会いが美しく描かれた絵本
「雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり、空も冷たい滑らかな青い石の板で出来ているらしいのです。」という一文に始まる宮澤賢治の『雪渡り』、絵本を開くと一面の雪の原がうっすらと青く、そして、七色の虹のような光を帯びて輝いています。
たかしたかこさんの描く雪の清らかなまぶしさが、四郎とかん子と 小狐紺三郎が出会う世界へと導いてくれます。狐と出会った四郎はかん子をかばって「狐こんこん白狐、お嫁ほしけりゃ、とってやろよ。」と叫びます。「四郎はしんこ、かん子はかんこ、おらはお嫁はいらないよ。」と応じる小狐の紺三郎…宮澤賢治の語りがリズミカルに進みます。
二人はキックキックトントンと紺三郎の歌に釣られるように踊り始めました。四郎もかん子も歌います。三人は踊りながら、歌いながら林の中に入ってゆきました。
「雪が柔らかになるといけませんから、もうお帰りなさい。今度月夜に雪が凍ったら、きっとおいでください。さっきの幻燈をやりますから。」言う小狐紺三郎。十一歳以下の子ども達だけが招待される狐の幻燈会…それは、「きつねは人をだます」という常識を覆す楽しい催しでした。
清らかな雪の原を舞台に人の子と狐たちの交歓を描いた宮澤賢治の幻想童話、その中に人間の偏見に耐えて生きるものへの賢治の温かいまなざしを感じるのは私だけでしょうか。たかしたかこさんが描く清らかな雪は、そんな賢治の思いを映し出しているかのように感じられます。
純粋であるがゆえに世に在り難かった宮澤賢治の短い命を思います。賢治の心を映し出すかのように描くたかしたかこさんの自然を通して、賢治の物語の世界に入ってみませんか。人の子と狐たちの出会いが美しく描かれた絵本です。
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