013 いもとようこ

2009年8月21日 (金)

いもとようこ絵本原画展&熊田千佳慕展

 昨日は映画『風のかたち』を観た後、大丸ミュージアムで開催中のいもとようこ絵本原画展を観て来ました。絵画としては、原画の方が良いというのはどの絵本作家の方にも当てはまるのですが、いもとようこさんのイラストには不思議な癒しの力があります。その癒しの力が原画になるとますます深くなる感じがしました。ミュージアム内がおとぎの世界、そして、癒しの空間となっていることを感じ、絵を観て、お話を読んで、深く心が慰められました。

Imotoyoko  大人になって味わう児童文学の良さのひとつに心の癒しというのがあるのではないかと思います。癒しという言葉を容易に使いたくはないのですが、日々の課題の重さに押しつぶされそうな時、ふっと児童文学作品のイラストや物語が与えてくれる癒しには独特のものがあることを感じます。

 そして、今日は、岩波ホールで上映中の「ポー川のひかり」という映画を観た後、銀座に向かい松屋創業140年熊田千佳慕展を観ました。たくさんの人が訪れてびっしりと人が押し寄せる中での絵画鑑賞でした。数年前、目黒美術館でゆっくり鑑賞した日のことをなつかしく思い出しました。蝶の鱗粉が絵からこぼれそう・・・花の花粉がふっと飛んできそう・・・そんな繊細なタッチの絵に妥協を許さない筆の動きを感じました。花の妖精を連れて帰りたくなりました。物語の種がいっぱい潜んでいる絵だった思います。(映画「ポー川のひかり」もとても良い映画でした。)

Photo おみやげに『さんしょっ子』の絵本とはがき大のクリアーファイル、ノートを買いました。包装の金の星社の袋もかわいかったです。

 8月は他にも観たい展示会や映画がありますが、これからしばらく身体を休めたいと思います。

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2009年2月 6日 (金)

こんな宿題があったらいいな!  『しゅくだい』

  動物たちの学校である日、やぎのめえこ先生が宿題を出しました。
 すると、みんなはいっせいに「えー」「うそー」「ほんとう?」と大騒ぎ。みんなの前では「やだ~」と言っていたもぐらのもぐ君ですが、急いでお家に帰りました。そして、おばあさんとおとうさんとおかあさんと一緒に宿題をしました。いっぱい宿題をしたもぐ君は、その夜、ぐっすり眠りました。

 「え~っ」と大騒ぎしていた子どもたちですが、次の日、みんなとても元気な顔で登校してきました。「しゅくだいをやってきましたか?」というめえこ先生に「はーい」と大きな声で返事をしました。もぐ君もみんなに負けない位、大きな声で返事をしました。

 こんな宿題あったらいいなぁ。
 何度でもいいなぁ。
 こんな宿題を出してもらえたら、大人も子どもも心がぽかぽか。

 さて、めえこ先生が出した宿題とは・・・。

 めえこ先生が出した宿題は子ども達だけでなく大人の心もぐっとつかみます。読み終えたとき、心があたたかくなりました。そして、人間の関わりの中で大切なこととは何かに気付かされました。描かれた動物たちの笑顔が何とも言えずかわいらしくて、心癒されます。あなたも、いもとようこさんのほのぼのとした絵の世界の中で、お子さんとともに、幸せな気分に浸ってみませんか。

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2008年12月23日 (火)

動物の命、人間の命・・・命の大切さを問い、人間と動物の共存を問う美しく切ない絵本

ずっとそばに… (レインボーえほん) Book ずっとそばに… (レインボーえほん)

著者:いもと ようこ
販売元:岩崎書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

  幼い頃、両親を人間につかまえられて失ったくまさんは、森のうさぎやりす、きつねの孤児たちを大切に育てていました。自分の子どものように世話をして、寝るときも抱っこして、決して、ひとりぼっちにはさせませんでした。ひとりぼっちがどんなにさびしいかを誰よりもよく知っていたからです。
 
 ある年の冬、山の木の実が全く実らず、食べ物が手に入らず、森の子どもたちがどんどん弱っていきました。子どもたちのために決心して人間の住む里に下りていったくまさんは、農家の庭先の柿の実をとりました。そのとき・・・

 森の動物の子どもたちを守ろうとするくまさんのやさしさ、そして、息絶えたくまさんを見放さない森の動物の子ども達のやさしさ。人間が山里に住むようになって、山奥へと追いやられた動物達。くまさんの両親を殺したのも、くまさんを殺したのも人間。

 「くまが出没、人間をおそった・・・」というニュースをきくたび、私は胸が痛みます。くまが住む山へ人間が侵入し、木は切られ、別荘がどんどん建てられています。山の動物性たちは、どこに住めばよいのでしょうか・・・?人間も動物も同じ生き物です。人間の命、動物の命、どちらの命も同じ命です。人間と動物が共存できるよう・・・私たちは考えねばなりません。」という作者のあとがきに深く共感しました。

 ほのぼのとした絵の世界の中に、動物たちのやさしさと動物たちが置かれている過酷な環境が描き出され、人間の残酷さが浮き彫りにされます。また、どんな過酷な環境であっても「ずっとそばに」居てくれる存在があれば幸せです。それは、森の動物たちも私たち人間も同じでしょう。幼い子どもたちの心にも作者のメッセージが確かに届くことでしょう。

 「ねこの絵本」「そばのはなさいたひ」でボローニャ国際児童図書展エルバ賞2年連続受賞、「いもとようこうたの絵本 1」で同展グラフィック賞受賞した作者ならではの力量が感じられる美しく切ない絵本です。幼い子どもたちに向けて書かれた絵本ですが、読み終えたとき、一人の大人として、かけがえのない命、かけがえのない存在について問うことを促されました。

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2007年4月17日 (火)

字を習いはじめる子どもたちにイチ押しのてがみ絵本  『にゃんのてがみ わんのてがみ』

 てがみと言えば・・・字を習いはじめる子ども達に一押しの絵本があります。

にゃんのてがみわんのてがみ にゃんのてがみわんのてがみ

販売元:楽天ブックス
楽天市場で詳細を確認する

 はじめてのおつかい、はじめてのがっこう・・・子どもたちにとっての「はじめて」はどんなこともワクワクドキドキするものです。
 この絵本の主人公のじろうちゃんは、お母さんに字を習っているところです。そこへやってきたネコのにゃん、そして、犬小屋からとび出してきたイヌのわん・・・、じろうちゃんの「はじめての字の練習」はどうもうまくいきそうにありません。
 じろうちゃんは、とうとうお昼寝をしてしまいました。そこで、お母さんから2通の手紙が届けられます。手紙の字を通して、にゃんとわんの気持ちを知ったじろうちゃんの心はワクワクドキドキしたのでしょう。じろうちゃんは、いっぱいいっぱい字の練習をします。そして、「はじめての手紙」をにゃんとわんに書きました。
 にゃんとわんに手紙を渡す時のじろうちゃんの笑顔が満足感に満ちています。そして、きょとんとした表情のにゃんとわん。絵本の最後のページを開くと、改めて感じるのがお母さんの愛情です。
 いもとようこさんの独自のはり絵の手法と淡い色彩には母性愛が満ちています。お母さんの愛情に包まれて、字の練習をするじろうちゃんの姿がほのぼのと描かれている絵本です。
 また、にゃんとわんのてがみにはユーモアがあふれています。人が字を覚えるのは、誰かに自分の思いを伝えたいから。そんな原点に立ち戻って、字を覚える楽しみを教えてくれる絵本ではないでしょうか。
 早期教育の工夫されたノウハウの中で文字を覚えるよりも、子どもたちにとっては、母親の愛に見守られながらワクワクドキドキする気持ちの中で文字を覚えることの方がどんなに大切なことであるかを考えさせられました。
 字を習いはじめる子どもたちに、そして、子どもたちに字を教える大人たちにイチ押しの絵本としてお薦めします。

(上記は、ほのぼの文庫のまざあぐうすが、2007/04/17bk1に投稿したレビューです。)

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