牛飼いの少年ロビンと白い羽の雁の妖精の束の間の出会いを描いた物語
夜と夜明けの間にうっすらと射す月明かり、霜が降りて、草原は銀色に輝いています。牛飼いの少年ロビンにとって、暖炉の火が暖かい家に帰る時間が近づいて来ました。お母さんが朝ごはんを作って待っています。牛を呼ぶロビンの声がこだまして、霧の中で呼び返す声が響いた時、一羽の白い雁が月明かりの中に消えるのが見えました。
ロビンは家路に着くのを忘れて、草原に落ちている雁の白い羽を辿って行きます。牛たちの道からそれ、ガマが生い茂っている湿地へと向かうと、そこには、雁の群れに囲まれて一人の少女が立っていました。少女は笑い声を立てて、手招きをしています。
少女が近づき、ロビンの手をとりました。その手は、月の冷たい光に触れたかのような感触でした。
「いらっしゃい・・・さあ、みんなと飛ぶのよ」と誘う少女にロビンは・・・。
寒い夜を通して、一人で牛を見守る少年ロビンに束の間の夢を見させてあげたかったのでしょうか。ターシャの深い人間愛を感じます。とがり耳をもつ牛飼いの少年ロビンと白い羽の雁の妖精との束の間の出会いと別れを描いた何とも神秘的で美しい物語です。
「ターシャ・テューダークラッシックコレクション」の中の異色の一冊。くすんだ青を基調とした白、黒、青、茶の少ない色彩で描かれた絵本、夜明け前の月の光と雁の白い羽が透明感あふれて美しく描き出されています。
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