003 ターシャ・テューダー

2009年2月 1日 (日)

牛飼いの少年ロビンと白い羽の雁の妖精の束の間の出会いを描いた物語

 夜と夜明けの間にうっすらと射す月明かり、霜が降りて、草原は銀色に輝いています。牛飼いの少年ロビンにとって、暖炉の火が暖かい家に帰る時間が近づいて来ました。お母さんが朝ごはんを作って待っています。牛を呼ぶロビンの声がこだまして、霧の中で呼び返す声が響いた時、一羽の白い雁が月明かりの中に消えるのが見えました。
 ロビンは家路に着くのを忘れて、草原に落ちている雁の白い羽を辿って行きます。牛たちの道からそれ、ガマが生い茂っている湿地へと向かうと、そこには、雁の群れに囲まれて一人の少女が立っていました。少女は笑い声を立てて、手招きをしています。
 少女が近づき、ロビンの手をとりました。その手は、月の冷たい光に触れたかのような感触でした。
 「いらっしゃい・・・さあ、みんなと飛ぶのよ」と誘う少女にロビンは・・・。
 寒い夜を通して、一人で牛を見守る少年ロビンに束の間の夢を見させてあげたかったのでしょうか。ターシャの深い人間愛を感じます。とがり耳をもつ牛飼いの少年ロビンと白い羽の雁の妖精との束の間の出会いと別れを描いた何とも神秘的で美しい物語です。
 「ターシャ・テューダークラッシックコレクション」の中の異色の一冊。くすんだ青を基調とした白、黒、青、茶の少ない色彩で描かれた絵本、夜明け前の月の光と雁の白い羽が透明感あふれて美しく描き出されています。

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ターシャ・テューダーコレクション

 私が好きな絵本作家のターシャ・テューダーさん(米絵本作家、園芸家)が、2008年6月18日、米東部バーモント州マルボロの自宅でお亡くなりになりました。享年92歳。

 米ボストン生まれ。1938年『パンプキン・ムーンシャイン』でデビュー。ストーリーだけでなく、情感豊かで繊細な挿絵も人気で「ターシャ・テューダーのマザー・グース」「ひつじのリンジー」など数多くの作品を残しました。作品の多くが日本でも翻訳されています。

  book----『パンプキン・ムーンシャイン』----book

 ハローウィーンの日に、コネティカットのおばあちゃんの家に遊びに来ている小さな女の子シルヴィー・アンは、かぼちゃちょうちんを作るために、りっぱにまるまるとふとったかぼちゃを探しに丘の上の畑に向かいました。
 おともは犬のウィギー。はぁはぁ息を切らしながら丘を登ると、刈り取ったとうもろこしの間に見事なかぼちゃが見えました。まるまると太ったかぼちゃは重くて持ち上げることができません。シルヴィー・アンは雪だるまを作る時の要領でかぼちゃをころがしてゆくことにしました。
 ところが、丘の端まで来て、下り坂が始まると、かぼちゃはころがりはじめました。ぼん!ぼん!ぼ、ぼーん!はずみをつけてころがってゆきます。やぎやにわとりやがちょうを驚かせ、どんどんころがる大きなかぼちゃ。
 シルヴィー・アンとウィギーとかぼちゃは、無事におばあちゃんの家に辿りつくのでしょうか。それは、この絵本を読んでのお楽しみ。
 アメリカで最も愛されている絵本作家ターシャ・テューダーの処女作。日本では初期傑作の絵本11冊が、内藤里永子さんの翻訳によって、2001年から2002年にかけて「ターシャ・テューダークラッシックコレクション」として出版されました。
 同コレクションにはシルヴィー・アンが登場する絵本が他に4冊あります。「がちょうのアレキサンダー」「こぶたのドーカス・ポーカス」「おまつりの日に」「ひつじのリンジー」
 いずれも豊かな自然と動物たち、そして、小さな女の子シルヴィー・アンが生き生きと描かれています。『パンプキン・ムーンシャイン』は、ハローウィーンにお勧めの一冊。自然への深い愛に満ちた愉快なお話です。

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コーギビルの村まつりを巡る愉快なお話  『コーギビルの村まつり』

コーギビルは、アメリカの絵本作家ターシャ・テューダーが描いた想像上の世界です。
 ニューハンプシャーの西、バーモントの東にある村で、教会とホテル、郵便局と雑貨店、それに戦争記念碑があって、コーギ犬と猫とウサギとボガートが住んでいます。
 ボガートは、スウェーデン生まれのトロルという妖精の一種、オリーブ色の体に水玉模様のあるあやつり人形のような陽気な妖精として描かれています。
 物語は、コーギビルで、クリスマスの次に楽しい「村まつり」のお話です。
 村の長老さんのスピーチ、祝砲、コーギビル音楽隊のファンファーレとともに始まった村まつり、最大のイベントはヤギのグランドレースです。
 コーギ犬のブラウン家と猫のトムキャット家の対決が予想される中、ちょっとした事件が・・・。銀貨100枚の入った大きな優勝カップがかかっています。レースに出場するために、ヤギのジョセフィーンを調教してきたコーギ犬のケイレブに、優勝を狙うエドガー・トムキャットが何か企んでいるようです。
 さて、レースの結果はどうなるのでしょう。
 コーギビルの村の風景、住人である動物や妖精の姿、村まつりの様子、どれもが細部まで丁寧に描かれています。想像上の世界ではあっても、コーギ犬、ウサギ、猫など登場する動物たちも村の風景も全てが現実の世界のきっちりとしたスケッチを基に描かれていることが感じられます。
 ターシャは、1830年代のニューイングランドの暮らしにあこがれ、バーモント州の自然に囲まれて、当時の生活様式を守りながら暮らしています。『コーギビルの村まつり』にはターシャの愛する古き良き時代の村まつりの様子がリアルに再現されています。
 原作の発行が1971年、ターシャ56歳の頃に完成した作品です。完結編とも言われている『コーギビルのいちばん楽しい日』を書き上げたのが87歳ですから、「コーギビル・シリーズ」三部作には、絵本作家としてターシャの人生をかけた並々ならぬ思いが感じられます。
 『コーギビルの村まつり』は、シリーズの第一作、コーギビルの村まつりを巡る愉快なお話です。

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2009年1月30日 (金)

手元に置いておくだけでも心が豊かになる絵本  『ローズマリーは思い出の花』

 左ページにはターシャ・テューダーのイラスト、右ページには美しい縁取りが施された書き込み可能なカレンダーと続く「メモリーブック」形式の絵本です。
 カレンダーには曜日が入っていませんので、どの年でも書き込みがが可能となっています。
 ターシャのイラストには、エミリー・ディキンソンに始まり、イエーツやエマソン、ジョン・ラスキンらの言葉が引用として、ひと言ずつ添えられています。いずれも洞察に満ちた魅力的な言葉で、ターシャのイラストとともに深く味わうことができます。
 JANUARYに引用されているエミリー・ディキンソンの言葉が心に残ります。

 どんな船よりもさまざまな異国へ
 わたしたちを運んでくれる書物
 どんな駿馬よりも勇ましく
 言葉はずむ詩のページ
 この関所は通行料もとらず
 どんな貧しい者も通してくれる
 なんとつつましいものよ
 人の魂を運ぶ馬車は

 私にとって、まさにターシャの絵本が「人の魂を運ぶ馬車」のひとつだからです。ディキンソンの詩の言葉を美しくイメージしたターシャのイラストも素敵です。12ヶ月間の引用の言葉を美しくイメージしてゆくターシャの絵のセンスには並々ならぬものを感じます。手元に置いておくだけでも心が豊かになる絵本ではないでしょうか。人生の記念すべき年の贈り物として、また、自分のための記念としてお勧めの一冊です。

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2005年11月 9日 (水)

『クリスマスのまえのばん 改訂新版 』~クリスマスを迎える喜びを描いた神秘的で美しい絵本

ターシャテューダー クリスマスのまえのばん Book ターシャテューダー クリスマスのまえのばん

著者:クレメント・クラーク ムア
販売元:偕成社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 『クリスマスのまえのばん』は、神学者、そして、文筆家であるクレメント・クラーク・ムーアが、自分の子どもたちのために、オランダの伝承とそのお祭りを元として作ったA Visit from St. Nicholasという詩にターシャ・テューダーがイラストを添えた絵本です。

 原詩は、今から180年ほど前のアメリカで発表されて以来、「八頭立てのトナカイに乗ってやってくる小人のサンタクロース」というイメージが定着したと言ってもいいほど有名な詩です。
 クリスマスを楽しみに子ども達が寝静まった頃、小さな八頭のトナカイとやってくる小人のサンタクロース、八頭のトナカイの名前が「ダッシャー・ダンサー・プランサー・ビクスン・コメット・キューピット・ダンダ−・ブリッツェン」と詩の中で呼ばれているところなど、原作者であるムーアの細やかな心遣いを感じます。そして、サンタクロースに出会うのが子ども達ではなく、大人である「とうさん」であることも、子どもの頃、サンタクロースを信じていた「とうさん」に再び夢を見せてくれるムーアの思いやりでしょうか。愛と喜びと神秘に満ちた詩です。
 クリスマスを描くためにターシャ・テューダーが厳選した詩であることを感じます。原詩もすてきですが、中村妙子さんの七五調の日本語訳がとてもリズミカルで愉快に読み進むことができます。
 この絵本は1999年にターシャが全面的に絵を描き直した最新版、原詩に忠実に描きながら、ターシャ・テューダーのクリスマスの世界を巧みに描き込んだ神秘的で美しい絵本です。
 表紙をめくると、その裏にはターシャが愛するコーギ犬達がハーブやトランペットを弾き、クリスマスを祝っています。雪に包まれた家や木々の風景は、ターシャの住むバーモント州の雪景色を思わせます。ページごとに美しい縁取りをされた絵の中に、ターシャが住む18世紀のニューイングランド様式の住居の隅々が描かれているようです。暖炉やキッチンに置かれた用具、ベッドや家具調度類、全てが繊細に描かれています。
 煙突から飛び出したサンタクロースは、コーギ犬を撫で、猫やふくろうと戯れる小柄で陽気なおじいさん、私たち人間だけでなく、ネズミやウサギ、犬や猫、小鳥など小動物にも訪れるクリスマスを迎える喜びが余すところ無く描かれているのではないでしょうか。
 クリスマスを迎える喜びを描いた神秘的で美しい絵本としてお勧めの一冊です。

(以上、ほのぼの文庫管理人のまざあぐうすが2005/11/02、bk1に投稿した書評です。)

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2005年10月19日 (水)

『人形たちのクリスマス 』~幼い頃の「魔法の不思議を信じる心」を思い出させてくれる美しい絵本

 古びた赤い家で暮らしている女の子ローラとエフナーは古い人形を持っていました。人形の名前はセサニー・アンとナイシー・メリンダ。普通の人形ではありません。パンプキンハウスという大きな家で暮らしています。毎年クリスマスにはびっくりするぐらいすてきなパーティーを開いてもらえるのです。人形たちと子ども達に訪れる楽しいクリスマスの絵本。
 ターシャ・テューダーの初期傑作絵本、「ターシャ・テューダークラッシックコレクション」の一冊、作者であるターシャの大のお気に入りの絵本です。

人形たちのクリスマス―ターシャ・テューダークラシックコレクション Book 人形たちのクリスマス―ターシャ・テューダークラシックコレクション

著者:ターシャ テューダー
販売元:メディアファクトリー
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 ターシャの幼い頃の思い出から生み出されました。クリスマスの喜びを2倍にしてくれた人形たちとの思い出に満ちています。「パンプキンハウス」というドールハウスの美しさをターシャの絵で楽しんで下さい。『もうすぐゆきのクリスマス』とともにお勧めのクリスマス絵本。幼い頃の「魔法の不思議を信じる心」を思い出させてくれる美しい絵本です。

(以上、ほのぼの文庫管理人まざあぐうすが2005/10/19、bk1に投稿した書評です。)

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2005年10月 9日 (日)

『もうすぐゆきのクリスマス』 子どもたちだけでなく、小さな小鳥やねずみたちをも明るく照らし出すクリスマス絵本

もうすぐゆきのクリスマス―ターシャ・テューダークラシックコレクション Book もうすぐゆきのクリスマス―ターシャ・テューダークラシックコレクション

著者:ターシャ テューダー
販売元:メディアファクトリー
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 丘をたくさんこえた、そのまた向こうにねずみたちが走り回り、壁にきつつきがたくさん穴を開けている古い古い家がありました。
 古い家に住む子どもたちセスとべサニーとマフィンは、クリスマスが近づいている静かな冬の夜、暖炉の火でリンゴを焼き、おばあさんの昔ばなしに耳を傾けています。おばあさんの声とともに聞こえてくるのはねずみの足音。
 クリスマスがくるまで、子どもたちは学校や家や自然の中でどのように過ごすのでしょう。森の小みちやウィンスロップの丘や小川でにぎやかに遊んでいるうちに季節は少しずつ移ろってゆきます。
 針葉樹林から切り出される樅ノ木、子ども達にとって夢のようなクリスマスが訪れます。ねずみたちもクリスマスプディングのおこぼれにありつくのでしょうか。
 子どもたちだけでなく、小さな小鳥やねずみたちをも明るく照らし出すクリスマス絵本。ターシャの初期傑作絵本、ターシャ・テューダークラッシックコレクションの一冊。輝く雪景色の中から妖精が飛び出しそうな美しい絵本です。
 同コレクションには、クリスマスの絵本として、「人形たちのクリスマス」もお勧めです。

(以上、ほのぼの文庫の管理人まざあぐうすが2005/10/19、bk1に投稿した書評です。)

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