<児童文学作品>
2023年4月 9日 (日)
2021年3月21日 (日)
『鬼の橋』~読むたびに味わいが深まる歴史ファンタジー
「ほのぼの文庫」を訪れてくださり、ありがとうございます。
本業多忙のため、ブログの更新ができずにいましたが、また、児童書を読む機会を得ています。引き続き、よろしくお願い致します。
今日は、伊藤遊著『鬼の橋』を再読しました。
『鬼の橋』は第3回児童文学ファンタジー大賞の大賞受賞作品である。1997年度に大賞受賞後、翌年10月に福音館書店から初版が出版されている。物語の舞台は平安時代の京都、主人公は、妹を亡くし失意の日々を送る少年篁である。ある日妹が落ちた古井戸から冥界の入り口へと迷い込む。そこでは、すでに死んだはずの征夷大将軍坂上田村麻呂が、いまだあの世への橋を渡れないまま、鬼から都を護っていた。
妹の死への負い目を背負い、大人になれない篁、両親に死に別れ、深い孤独を抱えて生きている阿子那、人を無惨に食い殺すという悪行を重ねてきた鬼の非天丸、三人が平安の世で、ある橋を通して出会い、それぞれの負い目や過去の罪や孤独感を乗り越えて生きていく。小野篁を中心とした物語であるが、阿子那と非天丸の関係抜きには語れない物語である。
小野篁や坂上田村麻呂という実在の人物を登場させることを通して、読者は平安時代にまつわる様々なイメージを喚起しながら、物語世界に入ることができる。確固たる時代考証に裏付けられており、平安時代の精神を巧みに描き出している。篁、阿子那、非天丸の三者がそれぞれの物語を生きている。それぞれの物語が、作者の心の闇のフィルターを通して描かれているため、読者の心に響く。
橋について考えさせられる作品でもある。非天丸が「橋はあると思えばある、ないと思えばない。」という。橋は本来つながっていない場所をつなぐものであり、境界線上にある。篁が蹴り飛ばした橋は、父である岑守を象徴しているのではないか。自分に元服を強い、妹の存在を忘れるように言い、篁の抱える心の負い目に寄り添おうとはしない冷徹な父、そんな父を篁は敬いつつ、疎ましく思っていた。篁も父の心に寄り添えなかった。しかし、橋を通して、阿子那や非天丸と出会い、あの世の橋を通して、坂上田村麻呂と出会い、この世の橋の大切さを理解するようになり、父の心に寄り添ってゆく。
阿子那にとって、また、非天丸にとっての橋は...。かつての友を追い切れず、あの世の橋の手前で泣いている坂上田村麻呂の姿が印象に残る。田村麻呂は、日本初の征夷大将軍であり、蝦夷の英雄、阿弓流為との対決や鬼退治の英雄として語り継がれている。歴史上の英雄である田村麻呂が一人寂しく泣く姿に、人間誰もが抱えている潜在的な不安感や疎外感や孤独感が象徴されている。そんな弱さを抱えて生きているのが人間なのだ。『鬼の橋』は読むたびに味わいが深まる作品だ。
2012年3月20日 (火)
(シャロン・ドガー著・野沢佳織・訳)『隠れ家 アンネ・フランクと過ごした少年』(岩崎書店)
世界中で読み継がれ、大ベストセラーとなっている『アンネの日記』。アンネ・フランクは自らの意志を日記の中で誰に臆することもなく綴ったことで、勇気ある少女として世界中の称賛を浴びました。その日記に登場するペーター・ファン・ペルスが、作家シャロン・ドガーによって、物語の主人公として蘇りました。
ペーターは、アンネが恋に似た気持ちを抱きかけた少年です。アンネにとっては、日記を書き続けることや将来の夢という、恋よりも大切なものがありました。しかし、ペーターにとってアンネは死の際まで心を占めた存在…。
ぼくはもう死んだけれど、耳をすませばきっと、きみにもぼくの声が聞こえるはずだ。
きみはまだそこにいるのか?
ぼくの話を聴いているのか?
ペーターは、死の時を迎えてもなおアンネに語りかけています。『アンネの日記』では、登場人物の一人に過ぎなかった少年が、自らの叶わなかった恋やアンネへの複雑な思い、そして、ホロコーストの犠牲者となった心中を死の際まで語り続けます。
物語は、ペーターが死の時を迎え、隠れ家での日々を回顧するプロローグにはじまり、アンネ・フランクの家族と共に潜伏生活を送った2年間を綴った第一部「隠れ家」、そして、ドイツ秘密警察に捕まり、アンネと離れ離れになった後の収容所での生活を綴った第二部「強制収容所」から構成されています。
第一部では、ペーターの視点で『アンネの日記』を再読しているかのような感触を覚え、第二部では、ペーターの視点でフランクル博士の『夜と霧』を再読しているかのような感触を覚えました。『アンネの日記』の登場人物がそのまま立ち上がってくるようです。アンネによって語られたペーター像を損なうことなく、ペーター・ファン・ペルスをより人間味を持った少年として感じることができます。
1947年の刊行以来、60年余りにわたり世界中で読まれてきた『アンネの日記』が、今、新たな形で蘇り、ナチス・ドイツのホロコーストの事実を語ります。ホロコーストは風化させてはならない歴史的事実の一つです。こうして、新たな少年の視点でホロコーストを語ることに意義を感じ、本書をヤングアダルト世代の少年少女達に必読の物語としてお薦めします。
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2011年7月27日 (水)
久しぶりの読書と映画鑑賞
諸事情で転居しました。
娘、息子、自分の引っ越しを終え、ようやく荷物整理が終わり、ネットの環境も整いました。久しぶりの読書は、新藤悦子著『ロップのふしぎな髪かざり』、そして、映画鑑賞は『西の魔女が死んだ』。
どちらも魂というものを感じる物語。引っ越しで疲れた心と体が洗われるようでした。
新藤悦子さんの新作、お薦めします。
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2010年8月30日 (月)
(山田由香・文/高野文子・絵)『動物園ものがたり』(くもん出版)
『動物園ものがたり』の舞台は、高いビルがたちならぶ、大きな町の一角にあるこんもりとしたみどりの森の動物園です。そこにやって来た8歳の女の子のまぁちゃん、まぁちゃんのおとうさんとおかあさん、おじいさんとおばあさん、そして、カバの飼育係の井上くんと小林さん。登場人物全員が主人公という珍しいものがたりです。
まぁちゃんは、自分からまい子になってしまいました。おとうさんとおかあさんが、けんかばかりしていることをとても悲しんでいます。おとうさんとおかあさんも、いい父親、母親になりたいのにけんかばかりして、お互いに悲しんでいます。
手をつないだ、おじいさんとおばあさんは、出会ってから50年になる仲良し夫婦ですが、子どもがいないことを悲しんでいます。カバの飼育係の井上くんは、カバの母親のウメと娘のモモが離れ離れになることを悲しんで、先輩の飼育係の小林さんに相談しています。
世界中のあらゆる所から動物園に連れて来られた動物達は、どうでしょうか? ゾウやキリン、ゴリラやライオンは、生まれ故郷であるアフリカのことを恋しく思っているのでしょうか? ペンギンやシロクマも北極や南極のことを思っているのでしょうか?
一つの動物園で、みんながいろいろな気持ちを抱えながら、過ごしています。それぞれの喜びや悲しみが、動物園という舞台でパノラマ式に展開するものがたりの中で、まい子のまぁちゃんが、「ヒ・ポ・ポ・タ・マ・ス!」というカバの学術名をとなえると不思議なことが起こります。さて、ものがたりのさいごは、一体どうなるのでしょうか?
テレビアニメ「サザエさん」や「おじゃる丸」など、人気アニメのシナリオをを手がけている山田由香さんの初めての単行本です。軽やかに、くきやかに、ものがたりの場面が展開するのはシナリオライターの為せる業でしょう。代表作「絶対安全剃刀」などで知られる漫画家・高野文子さんのイラストがふんだんに使われて、動物園の楽しい雰囲気を醸し出しています。
動物園は、なぜ必要なのでしょうか?そして、動物園に行くと、どうしてこんなにも楽しいのでしょうか?その答えのキーワードは、家族愛、動物愛、そして、地球への愛。
登場人物のそれぞれが自分の分身のように愛おしく、そして、人間も動物も同じ地球上に生まれたかけがえのない命であることを感じ、幸せな気分に浸ることができました。登場人物全員が主人公という物語の展開は、まさに児童文学の新境地。小学校中学年から大人まで楽しめるものがたりです。シナリオライターと漫画家という異色のコンビで取り組んだ、新しい児童書の世界で、あなたも、動物や人の気持ちを想像してみませんか?
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動物園ものがたり 著者:山田 由香 |
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2009年10月 7日 (水)
(追記あり)16世紀のトルコを舞台とした深遠な冒険物語〜魂を満たし、歴史への関心や人間を超えるものへの洞察を促す良書 『青いチューリップ』
2009年10月2日に聴講した「ヤングアダルト児童文学から世界が見える」の資料で『青いチューリップ』が紹介されていましたので、改めて書評をアップさせていただきました。
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青いチューリップ (講談社文学の扉) 著者:新藤 悦子 |
クルディスタンの山の中腹に咲く青いチューリップは、クルディスタンに春を告げる花だ。「ラーレ、ラーレ、青いラーレ」と歌うのは、羊飼いの少年ネフィム、ラーレと呼ばれるのはチューリップ。原産地のトルコではラーレは赤い花だった。ネフィムは「青い」という言葉に力を込めて歌う。「大地が血で染まろうと、天空に咲くは青いラーレ」とどこからともなく、しゃがれた声が響いてきた。父親のカワとネフィム以外の誰も知らないはずの歌の続きだ。チューリップの群生の中に男が倒れていた。ネフィムは、あわててカワを呼びに行く。
男の名は、バロ。オスマンの国の都イスタンブルからやってきた流れ者だ。時は16世紀、スルタン・スレイマン一世のオスマン・トルコの全盛の時代である。スルタンは、建築家のシナンに命じて、アヤソフィアを凌ぐモスクを建築することを計画している。クルディスタンの秘境で咲きほこる青いチューリップは、都では幻の花と言われている。スルタン・スレイマンがハレムの庭に欲しがっている花であることをバロは告げる。
父親のカワとともに青いチューリップの球根を持って、聖地エユップに巡礼の旅に出たネフィムは、神学校の教授アーデムの屋敷に引き取られることになり、教授とともに青いチューリップの交配による品種改良を行うことになった。
7年もの月日を費やして品種改良されたチューリップのアーモンド形の蕾から、青い花が開いた。宮廷の絵師頭シャー・クルーが「ペルシアの空の青だ」とうなる美しさ、目の覚めるような青、本物の青の中の青。妖しいほど美しい青であった。
「ラーレ、ラーレ、青いラーレ」と歌いながら、病床から起きてきたアーデム教授の妻アイラは、ようやく咲いた3本の青いチューリップを引きちぎってしまった。一瞬のできごとだった。「青いラーレ」の歌は、アイラの母親であるライラの形見の歌だ。「こんな花、咲かせてはいけない。よからぬことが、かならず起こります。」とアイラは言う。
アイラの言葉どおり、よからぬことが起こり始めた。
ネフィムとその父親のカワ、アーデム教授とその妻アイラ、娘のラーレ、アイラの父でありラーレの祖父である宮廷の絵師頭シャー・クルー、シャー・クルーの亡き妻ライラ、シャー・クルーの弟子メフメット、アーデム教授の屋敷を守る乞食の頭のジェム、屋敷のお手伝いのセマ、山の長老団を率いる山賊の長カジェ…16世紀のトルコを生きた人々の青いラーレの歌と青いチユーリップを巡る冒険物語。中近東、特にトルコに造詣が深い作家新藤悦子さんが初めて書き下ろした児童書である。
登場人物の一人一人が生き生きと描かれている。アヤソフィア、キャラバンサライ、スルタンの宮廷、辺境の地、巡礼の人々の様子、奴隷市、トルコの人々が愛したお菓子、キリム、シャフメーランの言い伝えなど、細やかな描写の中に、16世紀のトルコの生活が見事に甦っている。トルコのカッパドキア地方に留まり、中近東を旅し、中央アジアの遊牧民とともに過ごした作者ならではの語りではないだろうか。作者は、都イスタンブルより、辺境の地での貧しく、苦しい生活の中で力を合わせて生きている人々を語ることに多く筆を割いている。アーデム教授も青いチューリップの球根をスルタンには渡さなかった。幻の青を追うあまりに、目の前に咲く赤いチューリップが見えなくなるからだ。「文様にだって生命がある。目に映るものを、一度殺して、新たな生命を吹き込む、それが文様というものじゃ」という絵師頭シャー・クルーの言葉や、「パンは飢えを満たし、絵は魂を満たす。」という山の長老団の長カジェの父親の言葉が心に残る。天才建築家シナンへの興味や中近東の歴史への関心を促し、人間を超える偉大なものへの洞察を促す。児童書とは言え、大人まで味わうことができる深遠な冒険物語、魂を満たす良書ではないだろうか。
追記 本書は、2005年度に第38回日本児童文学者協会新人賞受賞しています。
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2009年10月 2日 (金)
(追記あり)「ヤングアダルト児童文学から世界が見える」 第3回図書ボランティアフェスタ@あおば学校支援ネットワーク
今日は、あおば学校支援ネットワークの第3回図書ボランティアフェスタのYA(ヤングアダルト)講座を聴講しました。講師は竹内より子さん(日本児童文学者協会国際部の副部長、オンライン小論文作文教室「言葉の森」講師、ブログ「ココナツ・カフェ」にて児童書についての情報収集発信とともにタイの児童文学に関する評論を多数書かれています)。
テーマは、ヤングアダルト児童文学から世界が見えるでした。
YAは児童書の中でも大人の本と子どもの本のかけ橋のような存在ですが、その中から、国際貢献、グローバルな視野をテーマとした本が紹介されて、大変興味深い内容でした。
- 『草花とよばれた少女』(シンシア・カドハタ)(白水社)
- 『ニンジャ×ガリレオ×ピラニア』(グレッグ・ライティック・スミス)(ポプラ社)
- 『砂漠の国からフォーフォー』(中川なをみ)(くもん出版)
この3冊が事前資料にて紹介されていましたので、読んでみました。1冊目は第二次世界大戦中の日系の女の子が花農家で健気に生きる姿や強制収容所に入れられてからのネイティブアメリカンの男の子と関わりが語られていました。日系の少女の姿を通して、日系移民のアメリカでの苦難の歴史を知らされる貴重な物語だと思いました。3冊目はニジェールに海外青年協力隊員として派遣された若い女性と現地の人々との関わりが語られていて、国際貢献とは・・・?ということを考えさせられる一冊でした。
多くの出版物、特に、児童文学作品の中で、海外で過ごす日本人(日系人も含む)の姿が語られた作品を見出すのは至難の業ですので、講座を通して良書に出会えたこと、そして、台湾という国からグローバルな視野の作品を世界に向けて発信している絵本作家Jimmy Liaoさんの映像やタイのアニメーションやタイの作家(プラープダー・ユンさん)の対談の映像を観ることができて充実した2時間でした。参加者の皆さんの感想もそれぞれにユニークで時間が限られていることが残念に思われました。
この講座に関しては講師の竹内より子さんが、ご自身のブログ「ココナツ・カフェ」に、その内容と感想をアップしてくださっています。下記をご参照ください。
・ヤングアダルト文学から世界を広げるという講座やってきました
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草花とよばれた少女 著者:シンシア カドハタ |
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2009年9月12日 (土)
思い出の絵本 No.11 『八月がくるたびに』初版、名作の愛蔵版、新・名作の愛蔵版を再読して思うこと
小学校4年生の時、夏休みの課題図書で読んだ『八月がくるたびに』を8月9日に再読しようと思って、図書館に予約を入れて、届いた本が記憶に残っている本と絵の雰囲気が違っているような気がして、改めて、図書館から初版(1971年)、名作の愛蔵版(1978年)、新・名作の愛蔵版(2001年)を取り寄せて再読しました。(8月9日原爆を記憶にとどめるためには、こちら。)
3冊の表紙の写真です。名作愛蔵版1978年から表紙の絵が変わっています。文章(語り)は細かいチェックはしていませんが、同じでした。初版の表紙の強烈な印象が今でも残っていましたので、イラストの雰囲気が大きく変わっています。名作愛蔵版と新・名作愛蔵版のイラストはだいたい同じでした。初版は、全体を通して、やや抽象的で個性的なイラストです。原爆の悲惨さを絵が強烈に語っていることを感じます。どちらのイラストも芸術性は高いものだと思います。
本を開いて標題のページから、初版は抽象的で強烈な印象が残りますが、愛蔵版→新・愛蔵版へと具体的なイメージになってきていることを感じました。初版は戦後25年目、以後、戦争からの年月を経るにつれて、子ども達に具体的なイメージを提示していく必要があって、描きかえられたのかもしれません。これからの子ども達に長く読み継いで欲しいという願いから、こうした改編がなされたのかもしれません。
きぬえちゃんが山下のおばさんに着せてもらった赤いワンピースのイラスト、きぬえときよしの父帰還のイラストです。(いずれも右側が初版、左側が愛蔵版)
長崎の被爆体験を語った児童文学作品として、再版されて30余年・・・原爆を語ったことに意義がある作品でもありますが、物語としてもすぐれているから読み継がれてきたのだと思います。今年の8月9日、40年ぶりに愛蔵版を再読したときには、初版のイラストを懐かしく思う気持ちが強かったのですが、3冊を比べながら再読してみて、イラストの具体化を通して、『八月がくるたびに』の愛蔵版、新・名作愛蔵版に今の子ども達への配慮を感じました。(配慮が成功している例ではないかと思います。)また、新・名作愛蔵版は文字が大きくなって読みやすくなっています。
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2009年7月18日 (土)
鼎談「狸どもの恩恵? -物語がうまれるとき」 梶山俊夫(画家)+高桜方子(作家)+アーサー・ビナード(詩人)@津田ホール
昨日は津田ホールで開催された下記の鼎談を聴講しました。
画家・作家・詩人、それぞれの創作の源をたどって
鼎談「狸どもの恩恵? -物語がうまれるとき」
梶山俊夫(画家)+高桜方子(作家)+アーサー・ビナード(詩人)
画家、作家、詩人それぞれの創作の舞台裏を、「昔話」の豊かな土壌から作品が生み出される過程を通して語り合う
- 7月17日(金)
- 18:00~19:30
- 津田塾大学千駄ヶ谷キャンパス 津田ホール
主催:津田塾大学 後援:津田塾大学同窓会 協力:JBBY
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ものしりプクイチ (教育画劇の創作童話) 著者:たかどの ほうこ |
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2009年6月11日 (木)
名作における新訳の必要性 原作を超える力 ― 曽野綾子訳『幸福の王子』(バジリコ)の最後の一文に寄せて
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幸福の王子 著者:オスカー・ワイルド |
小説『ドリアン・グレイの肖像』や戯曲『サロメ』で世界的に有名なイギリスの小説家、劇作家、そして、詩人でもあるオスカー・ワイルド(Oscar Wild 1854ー1900)の童話『幸福の王子』に出会ったのは、30代の初めに勤務していた女子高の速読の授業でテキストとして用いた"The Happy Prince and Other Stories"(PUFFIN CLASSICS)を通してでした。
ワイルドは"The Happy Prince and Other Tales"と"A House of Pomegrantes"という二つの童話集を30代で出版しています。中でも『幸福の王子』は、文学史上の名作の一つとして、年齢層を問わず全世界で愛読されている作品です。
2006年に"The Happy Prince"を翻訳した曽野綾子氏が本書の「あとがき」で「近頃の人々は読書をしなくなった。もし一人の人間が生涯でたった一冊しか本を読まなくなり、それも聖書のような或いはドストエフスキーのような重く長い作品は読めないということになったら、その時、そのたった一冊に選ぶのは、私なら『幸福の王子』だ。もっともほかにも数編そうした未練を残す作品はあるが、さし当りこの作品から選ぶだろう。」(47p)とまで絶賛しています。
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幸福な王子―ワイルド童話全集 (新潮文庫) 著者:ワイルド |
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より以前の記事一覧
- 上田真而子氏講演会 ― ナルニア国10周年記念連続講演会児童文学で世界を巡る・第1回 2009.06.07
- 瀬田貞二の世界(@教文館子どもの本のみせナルニア国) 2009.06.04
- bk1書評フェア 『赤毛のアン』を歩く 2009.05.01
- <生まれたての絵本棚>に初参加 2009.04.10
- マリラ世代のあなたにお薦め!西田佳子訳『赤毛のアン』 2009.03.18
- ケイト・ディカミロ『愛をみつけたうさぎ エドワード・デュレインの奇跡の物語』 2009.03.12
- ケイト・ディカミロ『きいてほしいの、あたしのこと -ウィン・ディキシーのいた夏』 2009.03.12
- 戦争を語ることなく、湾岸戦争の悲惨さを浮き彫りにしたユニークな物語 『弟の戦争』 2009.02.01
- 成長するとは自分を変えることではなく、本当の自分を知ること 『祈祷師の娘』 2009.01.30
- タゴールの詩に思いを馳せて、生きるとは、そして、幸せとは何かを考えさせられる一冊 『家なき鳥』 2009.01.30
- アンデルセンの童話をより深く味わうためにお勧めのアンデルセン伝 『アンデルセンー夢をさがしあてた詩人』 2009.01.30
- 信じるとは命をかけた選択 『銀のほのおの国』 2009.01.30
- ホロコーストを若い世代に伝える秀逸の物語 『ジャック・デロシュの日記』 2009.01.30
- ベンとベンを取り巻く人々を語ることを通して「アスペルガー症候群」への理解を促す物語 2009.01.28
- 愛の大切さを訴える心あたたまる物語 『赤い手袋の奇跡』 2009.01.27
- (新藤悦子著)『青いチューリップ』の続編です。 幻の青いチューリップを巡る冒険物語~16世紀のトルコを舞台として繰り広げられる深遠な物語 『青いチューリップ、永遠に』 2008.03.13
- 大人も子どもも楽しめる宇宙冒険物語 ホーキング博士の宇宙への秘密の鍵とは? 2008.03.04
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