芸術性の高い歴史絵本ーM・ブーテ・ド・モンヴェルの最高傑作 『ジャンヌ・ダルク』
百年戦争の後期、フランスの解放を神に託されたと信じ、シャルル七世から授かった軍隊を率いてオルレアン城の包囲を解くなどフランスの危機を救った少女ジャンヌ・ダルクを描いたモンヴェルの絵本。
わずか18歳にして国民的英雄となったジャンヌ・ダルクはドンレミイというフランス東部の小さな農村の娘でした。若き乙女ジャンヌ・ダルクの純真さ、美しさが繊細に穏やかな色調で描かれています。
また、当時の王侯貴族の絢爛な様、英仏軍の戦いの有様、ジャンヌ・ダルクを囲む民衆の表情、宗教裁判の非情な様、監獄の中の悲惨さ、夢に現れる聖女の美しさ・・・ジャンヌ・ダルクが勇敢に闘った後、イギリス軍の捕虜となり、生きながら火あぶりの刑に処されるまでの全てが動きを伴い、まるでお芝居の一場面を観るように描かれています。
ジャンヌ・ダルクが勇敢にイギリス軍と闘った地オルレアンは、モンヴェルの生まれ故郷でもあり、特別な思い入れがあったのでしょう。モンヴェルの作品の中で最高傑作と評されています。
同時代のイギリスの絵本作家ケイト・グリーナウエイやウォルター・クレインの影響を受けつつも、穏やかな色調と慎み深い表現がモンヴェル独自の魅力となっているのではないでしょうか。
一冊の絵本を通して、ジャンヌ・ダルクの勇気とひたむきな信仰が感じられる、洗練された美しい絵本、表紙がクロス張りの豪華な絵本です。現在絶版となっていますが、歴史絵本としても、芸術性の高い絵本としても復刊の価値のある絵本であると信じます。多くの子ども達に読み継いで欲しい絵本としてお勧めします。
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