だれもがいいたいことがある~意思伝達大作戦の仲間に!
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満月をきれいと僕は言えるぞ 著者:宮田 俊也,山元 加津子 |
「ロックト・イン・シンドローム」をご存じですか?
日本語で閉じ込め症候群と言われています。思いをしっかりと持っていながら、体のどこも動かないために、自分の思いを伝達する方法がなく、心が閉じ込められた状態です。本書の著者の一人である宮田俊也さん(宮ぷー)は、2009年2月20日突然脳幹出血で倒れ、ロックト・イン・シンドロームに陥りました。本書のもう一人の著者は、宮ぷーの同僚で親友の山元加津子さん(かっこちゃん)。二人とも石川県の特別支援学校の教員です。かっこちゃんは、植物状態となった宮ぷーさんに寄り添い、宮ぷーの意思をレッツ・チャットという意思伝達装置を用いて引き出していきます。どんな状況も「すべてのことはいつかのいい日のためにあるんだ」という「宇宙の約束」として受け止めて、あきらめません。
本書では、宮ぷーが脳幹出血で倒れてからの日々の様子やブログでのつぶやき、気持ちを伝える方法や意思伝達装置に関する様々な情報と工夫が写真入りで詳しく説明されています。また、かっこちゃんは、「おはなしノート」というイラスト入りのコミュニケーションエイドの開発も行っています。本書の第7章をお読みください。
私は知的な障害を抱えた娘の母親として、かっこちゃんの「子どもたちは、どんなに障害が重くても、必ずだれもが思いを持っていて、だれもが思いを伝えたいのだということを教えてくれる。あきらめなければ思いを伝えあえる方法はきっと見つけられる」という特別支援学校の教員としての思いを頼もしく思います。本書の副題ともなっている「意思伝達大作戦」は、宮ぷーのためにとどまらず、多くの意思を伝えられない存在に開かれているのです。
この本の圧巻は、生産停止となったレッツ・チャットの事業が、パナソニック・グループに引き継がれたことではないでしょうか? レッツ・チャットが生産停止となった時、かっこちゃんはメルマガやブログを通して、生産続行へ向けての署名のお願いを発信します。ただお願いを発信するだけでなく、なぜ、レッツ・チャットが必要なのかを分かりやすく解き明かし、さらに、「署名といっしょに社長さんへのお手紙を書いてくださいませんか?」と呼びかけます。かっこちゃんの思いには並々ならぬものがあります。レッツ・チャットの存在を多くの人に知らしめただけでなく、その思いが共感を得て、多くの署名が集まりました。そして、この不況下、パナソニックの経営者の心を動かしたのです。
『満月をきれいと僕は言えるぞ』という本書のタイトルは、宮ぷーがレッツ・チャットを用いて語ったことばです。何とすてきなことばでしょう! 奇跡的な回復を成し遂げた宮ぷーの思いが美しく結晶しているように思いました。
「このほんでだれもがいいたいことがあるとわかってください。としや」
宮ぷーの願いは、本書を集約するようなことばではないでしょうか? 誰もが、何らかの原因で意思が伝えられなくなる可能性があります。「近視の人がメガネをするように、意思を伝えられない人が当たり前のように意思伝達装置を使えるようにしたい」という、かっこちゃんがこの本を書いた目的に深く共感します。あなたも、本書を読んで、意思伝達大作戦の仲間になりませんか?
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