台湾の作家ジミーさんの描く場所〜光と影が交錯する中で、人の孤独が美しく描かれている 『君のいる場所』
郊外の古いアパートの隣に住んでいる彼女と彼
彼女は、どこへ行くにも左へ曲がる癖がある
彼は、どこへ行くにも右へ曲がる癖がある
隣に住んでいる彼女と彼が会うことはなかった
彼女は、悲しい小説を翻訳している
彼女は、ときに、世界は悲しみにあふれた場所だと感じる
彼は、ヴァイオリンを弾く
彼は、ときどき自分がからっぽで無力だと感じる
ふたつの平行線が天使の力で交わった
公園の噴水の前で出会った彼女と彼
胸躍る午後を過ごしたふたり
大粒の雨の中、電話番号のメモを交わして別れた
雨ににじんで見えなくなった文字
左に曲がる彼女と右に曲がる彼と
隣に住んでいても
ふたりは会えない
壁のない牢獄のような都会
疲れと閉塞感の中で
つかの間の思い出がきらめいている
彼女と彼が確かにいた場所
ふたりで過ごした午後の思い出とともに
季節が巡る
季節の中で揺れ動く彼女と彼の心
人を想って揺らぐ心は、切なく悲しく美しい
光と影の交錯する中で
人の孤独が
美しく描かれている
台湾の作家ジミーさんの描く美しい場所
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント